研究課題/領域番号 |
21K10162
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上田 公子 (山口公子) 徳島大学, 病院, 助教 (40335807)
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研究分担者 |
岩本 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90346916)
北村 尚正 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (50614020)
赤澤 友基 徳島大学, 病院, 助教 (10646152)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 硬組織形成 / ウシ胎児血清 / 超遠心 / 歯原性間葉細胞 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、初年度のプロテオーム解析の結果から、Fam3CとMyocilinに注目し、分化誘導した硬組織形成細胞に発現があるかどうかを確認することから研究を開始した。 ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum : 以下FBS)は,超遠心分離機にて100,000g×18時間超遠心し,3層に分かれた分画をそれぞれ回収し,最上方を第1層,中間層を第2層,最下層を第3層として使用した。初年度の研究で、歯原性間葉細胞(mDP)の分化について検討したところ、通常のFBS5%に第1層を5%添加し10%FBSとした培地の使用で、通常より早く石灰化が開始する傾向を確認できたため、今年度の研究では、通常のFBS10%使用をコントロール、通常のFBS5%、通常のFBS5%に各分画5%を加えた10%FBSの5群について、硬組織形成細胞のうち、歯原性間葉細胞(mDP)を用いて、分化誘導培地にて分化誘導し、mRNAを回収して、Fam3CとMyocilin、初期の分化を示す分子であるPanx3、分化を示す分子であるDsppについて、発現を確認する実験を行った。結果、第1層を5%添加した培地の使用で、早期にFam3Cの発現を認め、続いて、Panx3、Dsppと順に発現することが確認できた。Myocilinの発現はFam3Cより遅く、発現量もわずかだった。 そこで、Fam3Cの硬組織形成細胞への影響を検討するため、Fam3Cのタンパクを用いて、Fam3Cの添加濃度や培養期間による、硬組織形成細胞への影響の検討を開始したが、まだ安定した結果は得られていない。 歯原性上皮細胞についても、増殖と分化に関与する因子について研究を進めている。 今後,Fam3Cの硬組織形成細胞への影響を検討するとともに、そのメカニズムの解明を行い、象牙質再生または骨再生の新規治療方法の開発に繋がる研究を目指し、実践したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は,硬組織形成細胞として、骨芽細胞株、軟骨細胞株、歯原性間葉細胞株、歯原性上皮細胞株を用いて,硬組織形成を促進する因子の同定を目指す予定であった。しかし、歯原性間葉細胞について、第1層の使用で,早期からのFam3Cの発現や、その後Panx3、さらに遅れてDsppが発現する傾向を認めたものの,結果が安定せず,歯原性間葉細胞におけるそれらの分子の発現の有無と、その発現時期について,結果を得ることに時間を要した。また、歯原性上皮細胞については、第3層の使用で細胞増殖が促進され、第1層の使用で分化が促進されることは確認できたが、歯原性間葉細胞株、歯原性上皮細胞株を用いた実験にとどまり、その他の細胞についての実験を行うことが難しかった。 歯原性間葉細胞と歯原性上皮細胞の増殖と分化について,超遠心したFBS各分画に特徴的に含まれる分子の影響を確認した後,その他の骨芽細胞株、軟骨細胞株を用いた実験,硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する標的分子についての実験を予定していたため,歯原性間葉細胞に発現する分子の確認に時間を要してしまい,その後の実験が十分に行えなかった。 以上のような理由により、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究で,プロテオーム解析の結果から、歯原性間葉細胞の分化を促進する所見のみられる、超遠心法により得られたFBS分画の第1層に特徴的に発現し、骨や軟骨等の硬組織について,分化への関与が報告されているFam3Cが歯原性間葉細胞に発現し、続いて、初期の分化を示す分子であるPanx3やそれから少し遅れて、分化を示す分子であるDsppの発現が確認できたことから、令和5年度は,Fam3Cや、これまでの研究から増殖を促進する所見の見られる第3層に特徴的に発現する分子について実験をすすめ、それと並行して,歯原性上皮細胞、骨芽細胞株や軟骨細胞株についても,超遠心法により得られたFBS分画の増殖や分化に与える影響を、増殖試験(細胞カウント、BrdU)、ALP活性、アリザリンレッド染色、細胞遊走試験にて確認し、硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する分子の同定を行う。硬組織形成細胞の分化を促進する標的分子としてまずFam3Cから、確認の実験を開始する予定だが、この実験の結果しだいでは、プロテオーム解析の結果注目されたその他の分子についても網羅的に検討し、硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する分子の同定を行う。 その同定された分子について、Western blotting法やreal time RT-PCR法を用い、それぞれの細胞に発現するタンパクや遺伝子の解析を行い、硬組織形成促進のメカニズムを解明する。 また,効果的な石灰化誘導法の開発や効率的な硬組織形成の促進方法の開発を目指し,細胞培養系や、頭蓋冠開削モデルまたは歯の歯髄露髄モデルマウスを用いて、石灰化誘導促進効果や硬組織再生促進効果について検討を行い、臨床応用を目指す研究を実践したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の研究では,歯原性間葉細胞に発現する分子の確認に時間を要してしまい、その他の骨芽細胞株、軟骨細胞株を用いた実験,硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する標的分子の発現を確認するための実験を十分に行えなかった。さらに,プロテオーム解析の結果から注目されたFam3Cを含む分子について網羅的に検討し、硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する分子の同定を行う予定であったが,こちらも十分には実行できなかった。以上により,次年度使用額が生じたと考えられる。 令和5年度の研究では,令和4年度予定していた上記の研究に加えて,硬組織形成促進のメカニズムを解明するため,Western blotting法やreal time RT-PCR法を用い、それぞれの細胞に発現するタンパクや遺伝子の解析を行うとともに,効果的な石灰化誘導法の開発や効率的な硬組織形成の促進方法の開発を目指し,細胞培養系や、頭蓋冠開削モデルまたは歯の歯髄露髄モデルマウスを用いて、石灰化誘導促進効果や硬組織再生促進効果について検討を行い、臨床応用を目指す研究を実践する。このため,次年度使用額については,翌年度分として請求させていただいた研究費とあわせて、実験の消耗品として使用する予定である。
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