特発性下顎頭吸収(Idiopathic Condylar Resorption: ICR) は、進行性下顎頭吸収(Progressive Condylar Resorption: PCR)とも言われ、国が指定する難病のひとつであり、患者のクオリティーオブライフ(QOL)を著しく低下させる。その病態については不明な点が多いが、男女比が1:10と女性に多いことからも女性ホルモンの影響が疑われる。 そこで、エストロゲン低産生状態を呈するアロマターゼ遺伝子欠損(ArKO)マウスに対して、顎関節に早期にメカニカルストレスを加えることで、下顎頭の吸収を誘導し、新しいICRモデルマウスを開発し、ArKOマウスで報告している肥満状態によるmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の産生亢進が、顎関節部の骨・軟骨破壊を引き起こし、ICRを発症・増悪させるメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行っている。 令和5年度の研究実績としては、マウスを用いた基礎研究と並行して行っていた、実際の矯正歯科臨床の現場での特発性下顎頭吸収を呈する患者下顎頭のCT画像を用いて下顎頭の形態計測を行う特発性下顎頭吸収の新しい診断方法の一助となる鑑別法について、第66回中・四国矯正歯科学会大会にて“特発性下顎頭吸収を呈する矯正患者の下顎頭の形態学的特徴とその鑑別法の提案”というテーマでシンポジウムのシンポジストとして発表を行った。
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