レット症候群女児の歯髄由来の間葉系幹細胞(MSCs)について、健常者由来のMSCsと比較して明らかに増殖能が低くまた老化が早いことが判明したため、その希少性と疾患研究への活用の重要性の観点から、hTERT遺伝子導入による不死化細胞作成に取り組んだ。 市販の間葉系幹細胞専用培地を用いてレット症候群女児由来MSCsを培養し、コンフルエントに達した段階で0.02% EDTA-4Na含有DPBS培地にて培養を継続した。細胞の不死化を目的とするhTERT遺伝子導入について、neomysin耐性遺伝子配列を含むpBABE-neo-hTERT発現プラスミドをLipofectamine LTX with PLUS reagentによりトランスフェクションした。続いてhTERT遺伝子の導入に成功した細胞の選別を目的として10% FBSとG418(200μg/ml)を含むαMEM培地にて12-15日間培養を継続し、そののち生き残った細胞についてSingle-cell cloningを試みた。 健常女児由来のMSCsについては、G418耐性のhTERT遺伝子導入細胞を得ることができたが、残念なことにレット症候群女児由来MSCsについてはG418含有の培養液にて約2週間培養したところ、ほぼすべての細胞が死滅し、生細胞のコロニー形成は確認できなかった。わずかに生き残った細胞についても増殖能が著しく低下しており、Single-cell cloningによる不死化細胞のクローニングは困難であった。 以上より、最優先課題としたレット症候群女児由来MSCsの不死化が達成できなかったことから、健常女児由来のhTERT遺伝子導入MSCsについて、レット症候群の責任遺伝子であるMECP2をターゲットとするゲノム編集実験を計画中である。
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