研究課題
低ホスファターゼ症はセメント質形成不全に起因する「乳歯早期脱落」が、X連鎖性低リン血症性くる病は象牙質形成不全に起因する「歯肉膿瘍」が特徴的である。両疾患とも医科領域における新規治療法が開発されたが、歯科病態の詳細は解明されておらず、歯科領域での治療法としては対症療法しかない現状にある。本研究では、パノラマエックス線写真を用いた歯科症状の定量評価法を確立し、歯科症状を定量評価して歯科病態の発生メカニズムの解明につなげること、新規骨系統疾患治療法のヒトの顎骨や歯への影響を検討することを目的とした。健常児(2歳~15歳)の参照体を使用して撮影したパノラマエックス線写真をもとに、乳歯と永久歯の歯髄腔面積の基準値を作成した。この基準値を用いて、17名(男児8名、女児9名)のXLH患児のパノラマエックス線写真42枚と調査票を収集し、健常児と比較した。XLH患児においては、健常児よりも有意に広い歯髄腔面積を認め、また、男児は女児よりも広い歯髄腔面積を認める傾向があった。歯肉膿瘍の既往を有するXLH患児は、歯肉膿瘍の既往を有さないXLH患児よりも広い歯髄腔面積を認める傾向があった。これらから、パノラマエックス線写真を用いた乳歯と永久歯の象牙質形成不全の評価方法を確立し、この評価法を用いた象牙質形成不全の重症度の評価はXLH患児の歯科症状の診断に応用できる可能性が示された。また、健常児(2歳~20歳)の参照体を使用して撮影したパノラマエックス線写真を収集し、歯槽骨の骨密度の基準値を作成している。また、HPP患者は14施設から低ホスファターゼ症罹患患児55名のパノラマエックス線写真を得た。現在、パノラマエックス線写真の撮影機種による差異の有無を調査するため、異なる機種で参照体を使用して撮影した健常児のパノラマエックス線写真の収集を終え、分析を行なっている。
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