研究課題/領域番号 |
21K10186
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
谷本 幸太郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20322240)
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研究分担者 |
吉子 裕二 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20263709)
加藤 功一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50283875)
國松 亮 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40580915)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯科矯正学 / 再生医療 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
本研究は、乳歯歯髄由来未分化間葉系幹細胞(SHED)から産生されるエクソソーム(SHED-Ex)の骨誘導能を明らかにするとともに、臨床的には口唇裂・口蓋裂 (CL/P)における顎裂部の骨再生医療に応用することを目的とする。MSCs-Exが内包するmiRNAは、MSCs由来組織や分化段階等により発現プロファイルが変化し、分子生物学的特性に重要な影響を及ぼすと考えられる。 初年度(2021年度)では、SHEDの確実な単離、培養を達成するための条件検討を行った。乳歯歯髄から単離された細胞は、表面抗原によりいくつかのタイプに分類され、CD146陽性細胞には再生組織の血管新生が促進されることが示唆された。血管内皮細胞との相互作用が骨再生に重要な役割を果たすことが推察され、骨形成に有利な条件が備わっていることが示唆された。 そこで、2022年度では、特徴的なSHEDの機能発現のメカニズムの一つと推察されるエクソソームの解析を行った。SHED培養上清からのSHED-Exの分離条件を確立するとともに、その性質について検討した。その結果、得られたSHED-Exの粒子径は60-90 nmであり、培養液中に添加することにより骨髄由来未分化間葉幹細胞の石灰化能を亢進させることが明らかとなった。また、本作用はMAPK経路を介していることが示唆された。そこで、SHED-Exの特徴を解明するために、永久歯歯髄由来の未分化間葉系幹細胞(DPSC)からエクソソーム(DPSC-Ex)を分離し、比較検討を試みている。両者の機能的な差異を明らかにし、さらにその内包成分の比較検討をすることにより、骨再生誘導に最適な機能を有するMSCs-Exを特定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳歯歯髄由来未分化間葉系幹細胞(SHED)の安定的な単離、培養ができており、2022年度において、さらにSHEDから産生されるエクソソーム(SHED-Ex)の分離条件を確立し、その解析ができるようになったことは、大きな成果である。また、SHED-Exが骨髄由来未分化間葉系幹細胞(BMSC)石灰化能を高めることが明らかにした。さらに、SHED-Exの特徴を解明するために、永久歯歯髄由来の未分化間葉系幹細胞(DPSC)からエクソソームDPSC-Exを分離し、両者を比較しようとしているが、まだ安定した結果が得られていない。幹細胞の単離条件、およびエクソソームの分離条件をさらに詳細に検討する必要があることから、おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
SHED-Exが骨髄由来未分化間葉系幹細胞(BMSC)石灰化能を高めることが明らかとなったことから、今後はSHED-Exの特徴を明らかにすることを目的とした検討を行う。最初に、永久歯歯髄由来の未分化間葉系幹細胞のエクソソーム(DPSC-Ex)を比較対象とする。永久歯と乳歯は同じ歯であっても性質が異なることから、これらの歯髄由来のDPSC-ExとSHED-Exは類似点と特徴的な相違点をそれぞれ有することが推察される。それぞれのエクソソームの内包物の構成を比較することにより、特に石灰化能に影響を与えている要素を特定することを今後の研究の推進方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会等が中止あるいはオンラインとなり旅費が想定よりも少額となった。研究のための試薬、器具を購入するための費用とし、物品費として計上する計画である。
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