研究課題/領域番号 |
21K10194
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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研究分担者 |
時岡 一幸 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70332616)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 顎裂再建 / 生体材料 / 骨欠損形態 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究実績として、これまで用いてきたヒト臍帯由来間葉系幹細胞の有用性に関して、日本歯科基礎医学会学術大会においてシンポジウム形式で報告・討論を行った。その結果、同様な組織再生を行っている研究者間で活発な情報交換を進めることが可能となった。強調したのは、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞をラットの実験的顎裂に移植した点である。このような異種動物への細胞移植であっても、ヒト臍帯由来間葉系幹細は免疫原性が低く免疫学的拒絶がみられなかった点である。 2つ目の点として、これまで用いてきたラットの実験的顎裂骨欠損のモデルにおける効率的な歯槽骨再生を検討する目的として、移植に用いる担体を再考することとした。これまでHOYA社製のリフィットを用いて、骨組織誘導を図ってきた、今後さらに骨誘導能に優れた担体を用いることが必要と考えられた。そこで昨年度は、富士フィルム株式会社が開発を開始したRGD配列を持つⅠ型コラーゲン製品FF37101を移植時の担体として検討した。すなわち、5.0×2.5×1.0平方ミリメートルの骨欠損をラットに作製後、FF37101を単独で移植した。その結果、移植4週の結果より、担体を全く移植しない骨欠損はもちろんのこと、これまで使用してきたリフィトよりも石灰化誘導能と骨欠損の縮小に優れていることが明らかとなった。上記結果は、複数のラットと骨欠損への移植によっても再現され、FF37101による骨誘導は当初必要と考えられていた移植細胞の代替となることが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、当初の骨欠損回復を果たすためには移植細胞が必須と考えられていた。昨年度の研究成果より、必ずしも細胞成分は不可欠なものでなく、骨誘導能に優れた骨誘導材を担体として用いることで代替できることが明らかとなった。この点は、当初の研究計画では予想しなかった成果であり、研究の進捗状態が予想以上だったと評価される。将来的に最終目標とする唇顎口蓋裂児の臨床的な歯槽骨再生を想定した時に、試料供給が不安定で費用が比較的高額となる細胞移植を回避可能な方向に研究が進展している点は幸運だったと考えている。 一方で、臨床応用を考えた時に、患児の顎裂形態を正確に踏まえて顎裂再建を進めていく必要があると考えている。この点は、顎裂の三次元形態を評価し最適な形状に担体を調整していく点と密接に関連する。今後の研究を踏まえた時に、現在の問題点として顎裂形態に対する正確な三次元評価法を早急に確立していく必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、患児の顎裂形態を正確に踏まえて顎裂再建を進めていくことが求められている。そのためには、CTとその解析・評価ソフトを使用した三次元評価が必須となる。現状でこの目的を遂行していくにあたり、Materialise社製Mimics Baseの使用が最良と考えられる。Mimics Baseの購入には100万円を超える経費が必要であり、研究の遂行にあたり経費負担が大きすぎることが懸念される。また今後、さらに有用性の高いソフトが開発・販売される可能性もあり、現時点では購入が躊躇される。そこで、本年度の研究推進方策として、Mimics Baseの年間ライセンスを購入することとした。 また、これまで進めてきた富士フィルム株式会社が開発したRGD配列を持つⅠ型コラーゲン製品FF37101の骨誘導活性に関し、情報発信を進めていく必要があると考えている。そこで、本年度中に結果をとりまとめ、論文を作成し発表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により実験に用いる物品の入荷が滞ったことにより予定していた消耗品の使用が計画を下回ったため。
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