研究課題
デンマーク王国コペンハーゲン大学病院(Copenhagen University Hospital, Rigshospitalet)歯科希少疾患センター,コペンハーゲン大学歯学部およびデンマーク首都地域(Region Hovedstaden)ゲントフテ市の障害者歯科センターにて,障害者歯科および家族のウェルビーイングに関する情報収集を行い,現地研究者らと意見交換を行った.日本の障害者歯科システムは,デンマークのシステムをモデルとして発展してきたが,デンマークではより人権やウェルビーイングについての考え方が一般市民に浸透している.デンマークで得た知見は,日本の障害者歯科システムの発展にも寄与し,歯科医療を通した障害のある患者の家族全体のウェルビーイング実現の戦略を構築する上でかかせない視点であると考えられた.障害のある人の家族のウェルビーイングおよび支援体制と,障害当事者の生活や口腔内の状態等を調査する質問紙を完成させた.大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部および広島大学病院障害者歯科のほか,大阪府,兵庫県,広島県で障害者歯科を実施する計8か所の診療機関において,障害のある患者の家族に計700の質問紙を配布した.郵送にて回答を受け付けたところ回答率は82%であり,有効回答は70%程度と多変量解析に必要な回答数を確保することができた.これによりこれまで明らかではなかった家族のウェルビーイングと障害のある人の口腔内の関連について,および要因について解析を行う準備が整った.
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の影響のため,デンマーク滞在期間が制限されたことで,当初予定していた施設すべてに訪問し調査することができなかった.一方で質問紙調査の作成から配布,回収に至る作業は順調にすすんでおり,今後の解析および成果発表までの日程には問題は生じていない.
質問紙調査で得られた結果から解析を行い,障害のある患者の口腔状態と家族のウェルビーイングについての関連とその要因を明らかにする.また,考察および今後の障害者歯科医療の戦略構築に必要な知見を得るためデンマーク研究者らとの意見交換を行う予定である.
2021年度に計画していた海外調査がパンデミックで実施できなかった.そのため2022年度に実施したが,航空便の数が少なく,調査対象施設が一部に留まったことから,次年度使用額が生じている.2023年度において残りの海外調査を実施する予定である.
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日本障害者歯科学会雑誌
巻: 44 ページ: 52~61
10.14958/jjsdh.44.52
巻: 43 ページ: 17~25
10.14958/jjsdh.43.17