最終年度は,アンケート結果のデータをもとに各種統計解析を実施し,家族のウェルビーイングに寄与する歯科的要因の検索を行った.その結果の一部について成果報告を行った. 研究期間全体を通じ,広島,兵庫,大阪の障害者歯科診療所8か所に通院する患者の付き添い者700名を対象にアンケートを実施した.アンケート項目には,回答者および障害当事者の属性,生活環境,介護体制,介護負担,支援体制,歯磨き回数,歯磨きに携わる人や人数等を含めた.また同時に当事者の口腔内を調査し,現在歯数,処置歯数,う蝕歯数,歯垢,歯石の付着状況,OHATによる評価および診療時の行動調整についてのデータを収集した.アンケート回答と口腔内調査結果をもとに家族のウェルビーイングと障害当事者の口腔環境の関連についての分析を試みた結果,家族(回答者)の属性や支援状況ごとに口腔環境といくつかのウェルビーイング指標との相関を認めた.このことは口腔環境の改善や歯科医療現場での家族へのサポートが家族のウェルビーイングを向上させる可能性を示している. 期間中デンマークの障害者歯科診療所および歯科医療関係者との意見交換を行った.その結果,デンマークの社会システムにおける家族ケアと障害者歯科医療の充実が,家族のウェルビーイングに寄与していることが示された.日本国内においてもこれらのシステムおよび障害者歯科の充実ならびに歯科医療の家族支援の役割の見直し等の必要性が示された.
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