研究実績の概要 |
歯周病が脳卒中の発症や転帰に関連する可能性が明らかとなり注目を集めている。我々は、主要な歯周病菌の一つであるFusobacterium nucleatum (Fn)に対する血清抗体価が高値であることが急性期脳梗塞患者の3か月後の転帰不良の独立した因子であることを過去に報告している。しかし、実際に口腔内に存在している歯周病菌量が脳梗塞の発症や転帰に対してどのような影響を及ぼすかについては、これまで詳細な検討はなされていない。そこで我々は急性期脳梗塞患者の口腔内の舌苔に含まれる歯周病菌量を測定し、歯周病菌量と画像所見や転帰との関連を明らかにすることを目的とした。2021年8月から2023年3月までに当院及び翠清会梶川病院に入院し研究の同意を得た急性期脳梗塞患者を登録し、舌苔に含まれる歯周病菌量と背景因子、画像所見、3か月後m-RSとの関連を統計学的に解析した。歯周病菌量はreal-time PCR法を用い、舌苔に含まれる全菌量に対する6種類の歯周病菌量の割合を測定した。349例の急性期脳梗塞患者が登録され、発症前m-RS≧4の患者29例を除外した320例を解析対象とした。平均年齢は74.1±12.8歳、男性の割合が60.9% (n=195)、入院時NIHSSの中央値は3 [四分位 1-6]だった。測定した歯周病菌の中でFn陽性であることは多変量解析にて、重度の深部白質病変の存在 (odds ratio 1.88, p=0.026)、および3か月後の転帰不良(m-RS≧4) (odds ratio 2.70, p=0.011)に独立して有意に関連した。口腔内における歯周病菌Fnの菌量が小血管病の発症および脳梗塞の転帰に強く関連している可能性が示唆された。
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