Candida albicansによる口腔粘膜炎の発症におけるDMBT1の関与を調べた。1.C. albicans はDMBT1に結合し、Caイオンはその結合を促進した。また、菌体は、DMBT1を構成するペプチド(SRCRP1-7およびSID22)のうち、SRCRP2へもっとも強く結合することが認められた。 2.菌体表層およびDMBT1の構成糖のうち、マンノースとシアル酸が両者の結合に関与することが認められた。 3.C. albicans菌体表層成分から菌体とSRCRP2との反応に関わる成分を分離精製したところ、25 kDaのタンパク質が得られた。このタンパク質に対する抗血清を作成後、免疫染色およびcell ELISAにより、このタンパク質は菌体表層に局在することが確認された。 4.分離精製に成功した25 kDaアドヘジンは、菌体のSRCRP2への結合を完全には抑制しなかったことから、他のアドヘジンが存在する可能性が残った。そこで、さらに菌体成分の分離精製を進めたところ、29 kDaのタンパク質が結合に関与することが認められた。N末端アミノ酸分析により、この成分はphosphoglycerate mutaseであることが判明し、菌体表層に局在することも確認された。 5.C. albicansと口腔レンサ球菌との相互作用を調べたが、共凝集は生じなかった。また、DMBT1はStreptococcus mutansの凝集を誘導したが、C. albicansの凝集は誘導しなかった。さらにC. albicansとS. mutansの混合液にDMBT1を加えても、共凝集は誘導されなかった。 以上の結果から、C. albicansは菌体表層に存在する25 kDaのアドヘジンやphosphoglycerate mutase等を介してDMBT1へ結合し、口腔粘膜表面に定着することが示唆された。
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