研究課題/領域番号 |
21K10223
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
埴岡 隆 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00144501)
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研究分担者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (60372885)
矢田部 尚子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (80878257)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 禁煙支援 / 脱たばこ / 受動喫煙 / 歯科医師 / 歯科衛生士 / 加熱式たばこ / トレーニング / eラーニング |
研究実績の概要 |
本研究では歯科禁煙介入の教育・研修トレーニングをeラーニングで開発する。医科では禁煙治療が医療で、禁煙支援は保健で行われており、両者の特性を歯科で併せて行う点が特徴である。歯科禁煙介入は北米・英国で先行しているが、米国と英国の医科・歯科の禁煙介入実態調査では、歯科は医科と比べ不十分であり、歯科で喫煙者と出会う重要な機会が失われていた。本研究では日本で同じことを繰り返さないことを目指し、国民皆健康保険制度ならびに口気に注目した歯科固有のモデルを構築する。まず、先行国の実績のレビューでは、歯科介入モデルはどれも医科向け介入法の転用であり、歯科固有の特徴を十分に生かせていない可能性が指摘されており、歯科固有の病理および診療の特性ならびに歯科患者への行動科学に関して医科モデルの問題と改善点を検討し、日本で流行しつつある加熱式タバコ使用者への対応についても、歯科独自の内容を検討した。介入モデルは、WHOが推奨する5A5Rに基づくモデルが歯科に適合すると考えられた。わが国の国民皆保険制度については医科ではニコチン依存症が対象病名であるが、文献レビューの結果、歯科では口腔組織に付着・侵入したタバコ成分やニコチンおよび細菌変性に伴う組織・細胞レジリエンス障害に着目することができた。仮の病名に対して、タバコ・ニコチンのデブライメント禁煙の検査と治療を提案し、患者の希望に応じニコチン依存症治療との連携も別途目指せるモデルを導入した。口気については、特定のブランドでアルデヒド検知管に反応がみられたが、反応は弱く、全てのブランドではなかった。一方、口臭の原因となるメチルメルカプタンの口気レベルと禁煙意思の獲得との間に有意な関係がみられたことから歯周病の認識をもつことが禁煙意思の獲得に有用である可能性が示唆された。わが国固有の歯科医療制度に適応したeラーニングの新しいコンテンツ内容が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では研究期間を概ねⅠ~Ⅲの3期にわけて3年で行う。第Ⅰ期に予定しているeラーニングコンテンツ開発および試用(eラーニングシステム契約を行う)のうち、ニコチン等内容物と口腔微生物の相加・相乗的作用による口腔組織破壊の機序説明、喫煙による歯科領域の健康影響の疫学知見の総括に加えて補充する内容として、口腔粘膜へのニコチンと口腔微生物の相互作用による影響、歯周組織へのニコチンと口腔微生物の相互作用による影響、歯(エナメル質)へのニコチンと口腔微生物の相互作用による影響、歯周病等歯科治療の効果への喫煙継続および禁煙による治癒正常化の説明について整理し、さらに、先述したように口気との関連が新たに発見することができた。eラーニング導入については、基礎編のウェブ学習基盤が整い、サイト契約を待つばかりの状況であり、概ね順調に推移していると言える。一方、専門家との打ち合わせが新型コロナウイルス感染症のため、十分とは言えず、このため、eラーニング契約は次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
第Ⅱ期では、専門家との打ち合わせを充実した上で、eラーニングシステム開発および試用を計画している。トレーニング実施に伴う参加者の知識向上や意識等の調査についての研究計画については、倫理審査委員会による承認を、呼気・唾液検査とともに得ており、専門家との打ち合わせによりトレーニングのLMSの構築とともに受講者の募集の準備を開始する。コンテンツの追加開発として、わかりやすい画像・ピクトグラムを用いたトレーニング教材も新たに開発し、前年度研究で判明したニコチンと子どもう蝕の関係については、母乳栄養の観点からの注意喚起モジュールの追加も検討する。eラーニングの受講形式については、先行して行った個人による受講に加えて、歯科チームによる受講方式を大手外食産業で導入されている方式を参考に構築する。受講様式については、ニーズの高いマイクロラーニングを従来型の単元別の学習方式と比較する。eラーニングは維持費がかかるため、これに変わるメインテナンスフリーの方式、ムードルタイプを模索する予定である。トレーニング受講者が受講後にどのように介入を行ったか調べる追跡システムを構築し、フォローアップ調査を行う。なお、介入キットは基本学習ウェブからダウンロード可とする。第Ⅲ期では、歯学教育・歯科衛生教育担当者への教育実態および意識調査を行い、その結果をふまえて、eラーニングの最終開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う研究打合せの自粛によるものが約40万円であり、研究打合せの主目的であるeラーニングの構築が遅れたために、トレーニング管理システム(CMS/LMS)を装備したeラーニングの契約ならびにeラーニングのコンテンツ等作成ソフト購入についても、次年度に持ち越しとなったことによる。一方で、研究計画では、これらの遅延は、第Ⅰ期の後半の最終時期の内容になるため、計画全体の遅れとまではならなかった。なぜなら、次年度に行う予定であった第Ⅱ期の開始に必要な資源の調達について、次年度に持ち越しとなったことが、年度をまたいだ研究計画の遅れとなったため、単に、執行が次年度に持ち越されたことになる。したがって、研究計画の遅延は最小限にとどまり、次年度の準備の時期のずれにより次年度使用額が生じたもので、使用計画については特に問題は発生していない。
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