研究課題
アルツハイマー型認知症は加齢に伴って増加する神経変性疾患であり、症状の進行により最終的には寝たきり介護が必要な状態となる。脳内のアミロイドβの集積による神経毒性が疾患プロセスの中心とされているが、有効な治療法や、緩和方法が確立されていないのが現状である。神経変性の病態は未だ解明されていないが、アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、抗酸化遺伝子の誘導が酸化ストレスと神経変性を抑制することが示された。近年、歯周病がマウスの脳細胞へのアミロイドβの蓄積量を増加させるがことが報告されている。歯周病の病態にも酸化ストレスが関与するが、歯周病に由来するアミロイドβの蓄積に酸化ストレスがどの程度関係するかは不明である。本研究では、アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、歯周病由来のアミロイドβの蓄積に対する酸化ストレスの役割を検討して、抗酸化療法の予防効果について検討した。初年度は、最適なモデルを検討することとしていた。そこで、アルツハイマー型認知症モデルマウスを歯周病群と対照群に分けた。歯周病群には、下顎の第1臼歯に絹糸を巻き、歯周病を惹起した。対照群は無処置とした。2か月後に、マウスから脳を摘出した。一部は病理組織標本に用い、一部は遺伝子の抽出に用いた。対照群と比較して、歯周病群では脳内の酸化ストレスに関与する遺伝子が一部変動していた。脳内の2倍以上の変動があった316個の遺伝子群のうち、酸化ストレスに関与する遺伝子が2種類含まれていた。また、免疫染色の結果、海馬におけるアミロイドβの増加もみられた。