研究課題
本研究は,口腔機能低下症の管理とフレイル等の全身状態把握を結びつけた臨床評価を行ないながら,口腔機能とフレイルおよびサルコペニアの因果関係を示す評価指標を抽出できるか,また,これらの抽出した口腔機能の評価指標がフレイルを予防し管理する上で多職種間の共有情報ツールとして明示できるかを検討するものである。これらの検討によって,フレイルおよびサルコペニアの予防を推進するため,情報共有ツールを歯科から地域へ発信できることを目標にしている。研究開始から2年が経過し,これまでに自院と研究協力施設の3歯科医院と大学病院補綴科において,口腔機能とサルコペニアならびにフレイルの評価を250名以上行い,データが順調に集積されてきている。これまでのデータの分析において,口腔機能低下症は66%に認められ,サルコペニアは17%,フレイルは5%に認められた。サルコペニアの有無ならびにフレイルの有無に対して,舌圧が有意な関連因子となるようである。サルコペニア群は非サルコペニア群より,フレイル群は非フレイル群より舌圧が有意に低値を示すことが示された。今後もデータ集積を行う。情報共有ツールの開発にあたっては,クラウド利用が前提とならざる負えないと考えられる。現状において,医療情報のクラウド利用については認められつつある状況であるが,個人情報の扱いについての対策を考慮していく必要があると考えている。データ入力フォームから表計算シートとグラフ作成の連携システムの見通しはついてきている。
2: おおむね順調に進展している
口腔機能検査とサルコペニアの検査データは,大学病院ならびに歯科医院においては順調に収集されつつあり,分析を十分に行える段階にある。
データがある程度集積され,サルコペニアおよびフレイルと関係の深い口腔機能項目はほぼ見当がついてきているが,縦断的にみてどのようであるかの検討が,研究期間全体で集積したデータの中から検討されるべきであると考えている。
感染対策として研究情報収集ための学会出張を控えたことから予定していた出張旅費が残ってしまったことと,情報共有ツールプログラムの作成謝金を自らプログラム試作したために使用しなかったこと,論文掲載料がディスカウントされたことなどから次年度使用額が生じた。今後は,口腔機能計測のための消耗品と情報共有ツールを発展させたプログラム作成のための費用に使用していく予定である。
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Dysphagia
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