研究課題/領域番号 |
21K10234
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
溝口 尚子 明海大学, 歯学部, 講師 (00548919)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 嗜好 / 風味 / 味覚 / 嗅覚 / 光学計測 |
研究実績の概要 |
摂食嚥下障害は、誤嚥性肺炎を筆頭として多疾患のリスク因子としても注目されている。そのため本障害への理解とともに根拠に基づいた対応方法の充実が期待される。我々は摂食嚥下リハビリテーションに貢献することを念頭において、食に関する“満足感”の源は「おいしさ(風味)を感じること」と位置づけ、風味認識に関わる中枢神経機構の解明に取り組んできた。現在は風味学習と脳活動の記録を組み合わせて食に関連する化学感覚の情報処理について解析し、ニオイを効率的に臨床応用するための根拠を得ることを目指している。そのため脳神経科学的見地から、学習によってなじみのある状態となった飲食物の「風味」を知覚・認識するメカニズムを明らかにし、摂食嚥下リハビリテーションにつなげることを本研究の目的とした。 現在はC57BL/6マウスに対し味およびニオイの嗜好学習訓練を計画し研究を進めている。本来マウスは雑食であるため、嗜好度を判定する場合に、離乳後から与えられる固形餌および飲料水と比較して摂餌量の多いものを各個体の嗜好餌として取り扱うこととした。その過程で、個体差が少なく同一に好まれうる食物由来のニオイ物質に当たりをつけることができた。風味学習が成立したかの確認には、短期絶食後に嗜好餌のニオイ添加固形餌と非添加固形餌を与え、その摂取量の差をもとに判断する計画で進行中である。なお液体呈示を実施した場合には短期絶水後の飲水量とする。摂餌量や飲水量以外に、血液を採取し、空腹時、平常時、行動実験過程および光学計測時のストレス度を比較する。各過程でストレス度を測定することにより、リハビリテーションに有効かつストレス度の少ないニオイ利用が可能となるポイントを見極める。 また学習成立確認テストの結果をもとに光学計測および免疫組織化学染色を実施し、風味学習前後の中枢神経におけるニオイ応答特性を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C57BL/6マウスに対し味およびニオイの嗜好学習訓練を実施するとともに、その過程で摂餌量をはじめとする実測データを集め解析を進めている。本来マウスは雑食であり、嗜好餌には個体差が大きいことが予想される。これまでの研究過程において、個体差が少なく同一に好まれうる食物由来のニオイ物質に当たりをつけることができたことから、本年度はニオイ物質を限定して研究を進めた。 学習訓練によって風味学習が成立したかの確認に、短期絶食後の嗜好餌のニオイ添加固形餌と非添加固形餌の摂餌量の差をもとに判断する予定で引き続き研究を進めているが、その手法の調整に工夫を要することがわかり時間を費やした。研究遂行策として学習訓練過程において固形餌だけでなく、ニオイ添加水を呈示して飲水量を継続して記録するプロセスを追加する等の対応を行った。そのほかに血液を採取し、空腹時、平常時、行動実験過程および光学計測時のストレス度を比較検討する。各過程でストレス度を測定することにより、リハビリテーションに有効かつストレス度の少ないニオイ利用が可能となるポイントを見極める。こちらについても検討を進めている。また学習成立確認テストの結果をもとに光学計測等で中枢神経系に生じる応答データを取得および解析するための装置の調整も並行して実施している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きC57BL/6マウスに対し味およびニオイの嗜好学習訓練を行い、マウスの飲食物に対する嗜好を順位付けした後に風味学習の成立をテストによって確認する。そのほか、血液を採取し、空腹時、平常時、行動実験過程および光学計測時のストレス度を比較する。進捗状況に応じて、学習成立確認テストの結果をもとに、学習したニオイと新規ニオイを呈示し、麻酔下動物における皮質応答をin vivo光学計測法を用いて計測する。In vivo光学計測では、皮質表層の応答変化を記録できるが、記録の担保として細胞外電位記録を試みる。また脳神経活動は表層だけでなく深部でも起きていることが予想されるため、免疫組織化学染色を実施し、風味学習前後の中枢神経におけるニオイ応答特性を調べる。これにより大脳皮質活性の左右差と延髄での応答等を解析することが可能となるので、光学計測結果と併せて神経機構解明の一助とする。 さらに本研究課題で得られた知見を人へとトランスレーションすることを見据えて、次の一手としてモデル動物を利用する計画である。初年度から使用しているC57BL/6マウスは遺伝子組み換えに広く利用される他、同種のなかでは比較的老化が遅く本研究に使用する週齢では加齢変化はほぼないとされている。そのためモデル動物利用の際には、系統に特異的な応答か病態もしくは加齢に依存した応答か判断するために、現在行っているC57BL/6マウスでの結果と常に比較しながら研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅延に伴い、消耗品として申請していた実験動物費およびシステムの調整メインテナンス費用分が次年度に先送りになったため、その費用に充てる計画である。使用している味およびニオイ呈示システムには、使用や経年により劣化する性質がある部品が多く用いられている。例えば味呈示の際には糖や酸および電解質液の使用により電磁弁、チューブ等が劣化する。また、ニオイ呈示の際に使用するニオイ物質が特徴的なものであることからも各部品にニオイが徐々に付着するため、当初から定期的な各部品の調整メインテナンスおよび交換費用を申請している。
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