経皮的電気刺激は、嚥下関連筋のリハビリテーション分野でその有効性が示されている。今年度では、Vital Stim Plus(インターリハ株式会社)のパルス持続時間を変更した2つの異なる訓練プロトコールを設定した介入研究を行い、摂食嚥下障害者への有効な舌訓練法について検討した。 対象は、摂食嚥下障害を主訴として来院した高齢者9名(男性8名、女性1名、平均年齢82.1±5.2歳)である。登録順に研究対象者を2群に分類した。1群(5名)は第Ⅰ期にパルス持続時間を300μsに設定した舌挙上訓練(訓練A)を受け、4週間のウォッシュアウト期間後、第Ⅱ期はパルス持続時間を700μsに設定した舌挙上訓練(訓練B)を受けた。2群(4名)はその逆とするクロスオーバー試験を行った。訓練の内容は、頸部刺激を持続した状態での舌挙上訓練を週2日、4週間継続とした。アウトカムは、訓練前後の最大舌圧と平均舌圧とした。 両群ともに第Ⅰ期訓練後の最大舌圧、平均舌圧の改善が認められた(p<0.05)。第Ⅰ期の介入の影響が第Ⅱ期に持ち越されないことが重要であるため、持ち越し効果について検討したところ、最大舌圧、平均舌圧ともに持ち越し効果は認められなかった。治療効果については、最大舌圧(p=0.358)、平均舌圧(p=0.881)ともに訓練法間での統計学的な有意差は認められなかった。 以上より、訓練A、Bとも舌圧の改善は認められたが、訓練Aと訓練Bによる治療効果に有意な差は認められなかった。サンプルサイズが少ないため、引き続き研究対象者を増やしての検討が必要である。
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