研究実績の概要 |
日本の誤嚥性肺炎死亡率は諸外国と比較し高水準であり,原因の一端は AMR 菌を含むカンジダ菌である。しかし,現在のカンジダ症治療は抗菌薬治療のみであり,AMR 菌増加に伴う諸問題への解決が困難なだけでなく増長する。故に,抗菌薬不使用の新たなカンジダ症の根本的治療法の開発が必須である。近年,MRSA などの耐性菌を光感受性物質で染色し光照射を施し殺菌する,抗菌薬とは異なる機序の抗菌光線力学療法 (aPDT) 研究が活発化している。申請者はこの方法を応用し生体に安全な色素で染色したカンジダ菌を可視光線で殺菌する新規カンジダ症治療を確立すべく以下の研究を行った。 当該年度は,本抗菌光線力学療法において主軸となる色素の医薬品色素の検討を行った。 まず,各種医薬品色素を調査し,赤色 3, 102, 104, 105, 106号, 黄色 4, 5号, 緑色 3号, 青色 1, 2号を検討対象とすることとした。 これら色素の吸収波長をDS-11 (DeNovix) UV-Vis 計測を用いて同定した。また,濃度変化を行うことによる吸収波長の変化を検討した。各種色素によるピーク波長は異なるが, 同濃度でも緑色 3号および青色 1のピークの相対的強度が高いことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究の遅れから,本年度行う予定であった励起波長の同定を行い,各種色素における励起波長による活性酸素種の検討を行う。その後,2022年度予定の細胞毒性およびCandida albicansへの毒性の検討を行う。2023年度は抗菌光線力学療法による殺菌作用の検討を行い,総合評価を行い論文執筆を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初の予定と比較し,研究がコロナ禍により大幅に遅れている点,またこのため検討できなかった項目により励起波長が同定できなかった。そのため高額品目であるフィルターの購入を控えたため。
(使用計画)本年度の研究に用いる予定であった経費は本年度遂行できなかった研究検討すなわち物品費に用いる予定である。また,次年度経費に関しては,研究計画の変更に伴う物品の変更以外は当初の予定通りの使用を計画している。
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