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2022 年度 実施状況報告書

原因疾患にもとづいた要介護高齢者の低栄養予防プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K10251
研究機関大阪大学

研究代表者

野原 幹司  大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (20346167)

研究分担者 松村 えりか  大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (30816450)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード低栄養 / 嗅覚 / 味覚 / アルツハイマー型認知症 / 食欲
研究実績の概要

これまでの研究から,要介護高齢者においては嗅覚や味覚は著しく低下しており,それらが食欲に影響している可能性が示されたが,個々の患者の栄養改善を考えるには,疾患ごとの嗅覚・味覚・嚥下機能と食欲との関連を明らかにする必要がある.
本年度は昨年度に引き続きアルツハイマー型認知症の症例(AD群)を対象に研究を行った.対象者は前年度より増え57名(FAST stage 1~6,平均年齢:88.1±5.3歳)となり,FASTの平均は5.1±0.6であった.本年度は対照群としてアルツハイマー型認知症の診断がない高齢者(非AD群)も調査対象とした(平均年齢:81.1±6.1歳).
調査項目は,嗅覚検査(OSIT-J),味覚検査(ソルセイブ),食欲(CNAQ),体格(BMI),服薬数とした.AD群と非AD群の平均年齢に有意差を認めた(p<0.01,t(94) =5.9 )ため,調査項目は年齢を調整した共分散分析にてそれぞれの調査項目の比較した.
AD群と非AD群の2群で比較した結果,OSIT-JはAD群:0.9 [SD 1.4] 点,非AD群6.5 [SD 3.3] 点となり,AD群が有意に低下していた(p= 0.02).そのほかの調査項目の平均は,ソルセイブ(AD群:0.9 [SD 0.4] ,非AD群6.5 [SD 3.3],p=0.34 ),CNAQ ( AD群:30.4 [SD 3.0] 点,非AD群29.9 [SD 3.4]点 p=0.35 ),BMI(AD群:21.3 [SD 3.3] ,非AD群:22.0 [SD 2.8] ,p=0.82)となり,いずれも2群間に有意な差を認めなかった.以上のことから,アルツハイマー型認知症においては,アルツハイマー型認知症でない高齢者と比べて著しい嗅覚低下が認められたものの,味覚低下は認められず,食欲や体格についても差がないことが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はヒトを対象とした調査研究であり,とくにヒトの中でも疾患を有する高齢者(要介護高齢者)を対象としている.そのような調査の性質上,主たるフィールドは病院や高齢者施設となる.2020年以来のCOVID-19感染症は,致死率の高い高齢者に対する感染対策が極めて重要であり,その流行期においては高齢者施設において外部からの来客を禁止するところが数多く出てきている.そのため,本研究においても,予定していた施設での調査が中止になったり,延期になったりすることがあった.
その対策として,厳重な感染対策を行って調査する,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間を避けて調査するなどを行ってきた.本研究の申請時から感染状況も考慮して研究計画を立てていたため,COVID-19の流行を繰り返した年度の割には,それなりの調査成果が得られたと思われる.来年度5月から制限が緩和されるため,追加調査はさらに行いやすくなると思われる.対象者を増やし,国際学会での発表および英文雑誌への投稿を進めていく予定としている.現在,論文の緒言と方法は作成にかかっており,被験者が増えた時点で結果,考察を仕上げていく.

今後の研究の推進方策

方策としては,感染対策の徹底(調査時にCOVID-19を持ち込まない,水平感染を防ぐ,など)を行い,追加調査ができる施設を増やしていく.現在はアルツハイマー型認知症のみを対象としているが,変性疾患としてはアルツハイマー型認知症に次いで多いとされるパーキンソン病も調査対象にする予定である.本研究助成の期間で十分な調査結果が得られるかは分からないが,次に申請する科学研究費のパイロットスタディになるようなところまで調査ができればと考えている.
アルツハイマー型認知症については,ある程度被験者数が集まってきたため,データ解析にも時間をかける予定にしている.統計の専門家に指示を仰ぎつつ,単変量・多変量解析も視野に入れながら,アルツハイマー型認知症における栄養状態の評価,低栄養があるとするとその原因解析を行っていく予定である.過去の報告ではアルツハイマー型認知症の低栄養の原因の一つが嗅覚低下にあると考察されているため,本研究では特に嗅覚に着目した解析を行っていく.
論文は緒言,方法はすでに作成できる段階にあるため,随時作成していく.結果が出た時点で,他の専門家の意見や指導を仰ぎつつ,考察の作成にも取り掛かりたいと考えている.考察の完成前には他の専門家の意見を聞く意味も含めて,日本老年歯科医学会で学会発表を行う予定である.そこで得られた助言を加味して,本年度中には英語論文を1篇作成できればと考えている.

次年度使用額が生じた理由

COVID-19感染症の流行のため,調査研究が十分に行えず,その分の経費が繰り越しとなった.また,研究成果の発表や結果に対する意見交換のために学会現地参加を予定していたが,そちらもCOVID-19感染症流行のためできなかった.その分が次年度使用額として生じた.感染症の流行が落ち着けば,それら予算は次年度に使用する予定である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 8件)

  • [雑誌論文] 認知症高齢者の嚥下障害2023

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 雑誌名

      老年医学

      巻: 60(1) ページ: 1-10

    • DOI

      10.3143/geriatrics.60.1

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 高齢者の認知症2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 雑誌名

      ニュートリションケア

      巻: 15(11) ページ: 1028-1031

  • [雑誌論文] 歯科が行うポリファーマシー対策~薬剤性嚥下障害への対応2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 雑誌名

      日本歯科医師会雑誌

      巻: 75(5) ページ: 379-385

  • [雑誌論文] 歯科における薬剤性嚥下障害への視点2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 雑誌名

      歯界展望

      巻: 141(3) ページ: 429-432

  • [学会発表] 認知症高齢者の食支援~キュアからケアへ~2023

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      日本認知症予防学会神奈川県支部 第12回学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 誤嚥性肺炎予防としての口腔ケア~その効果と限界2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬からの摂食嚥下臨床2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第15回日本在宅薬学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬から始める摂食嚥下リハビリテーション~薬剤性嚥下障害への対応2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第28回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬剤性嚥下障害~その肺炎,薬が原因かも?~2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第28回神奈川摂食嚥下リハビリテーション研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 治らない嚥下障害への対応~認知症高齢者の食支援2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第14回日本臨床栄養代謝学会北海道支部学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 認知症高齢者の摂食嚥下リハビリテーション~キュアからケアへ2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第62回静岡リハビリテーション懇話会
    • 招待講演
  • [学会発表] 薬からの摂食嚥下臨床~服薬困難と薬剤性嚥下障害に挑む2022

    • 著者名/発表者名
      野原幹司
    • 学会等名
      第16回日本薬局学会学術総会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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