研究課題/領域番号 |
21K10255
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
玉木 直文 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (20335615)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗酸化物質 / 活性酸素種 / 抗癌剤 |
研究実績の概要 |
癌治療の手段の一つとして化学放射線療法を行うことが増えてきているが,その副作用として口内粘膜炎が発症することが問題となっている。近年,この化学放射線療法時に発生する口腔粘膜炎に酸化ストレスが関与していることが分かってきた。そこで本研究においては,抗酸化物質の摂取によって酸化ストレスを制御することで,口腔粘膜炎の発症予防を行うことを目的とする。 2021年度は,頭頸部がん患者における化学療法時の口腔粘膜炎の発症を想定した,細胞培養によるモデルを用いた研究を行った。細胞培養系として,ヒト歯肉上皮細胞を用いて,以下の実験を行った。細胞に投与する抗がん剤としては,Cisplatin (CDDP)を用いた。抗酸化物質としては,レスベラトロールとを用いた。 まず最初に,テトラゾリウム塩(WST-1)を用いて,抗がん剤であるCDDPの歯肉上皮細胞に対する細胞毒性実験を行った。0.5 ~ 10 μg / ml の様々な濃度のCDDPを,96ウェルプレートにまいた歯肉上皮細胞に投与し,24時間・48時間・72時間後に,それぞれの細胞毒性の測定を行った。その結果,24時間後における,CDDP 3 μg / mlが今後の研究を進めていく上で最適な実験条件であることが分かった。次に,レスベラトロール単独投与による効果について検討した。1 ~ 100 μMの様々な濃度のレスベラトロールを単独で投与したところ,10μMを超えた濃度では細胞毒性を示したため,今後の実験では10μM以下の濃度で用いることとした。 さらに,CDDP投与時の活性酸素種の過剰発生や炎症性サイトカインの産生についても研究を進めており,これらに対するレスベラトロールの抑制効果についても検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021度は,ヒト歯肉上皮細胞を用いて,抗がん剤と抗酸化物質の効果の検討を行った。その結果,Cisplatinによる細胞毒性が歯肉上皮細胞でも認められ,さらには抗酸化物質であるレスベラトロールの使用可能濃度についても検討した。 抗酸化物質として,今回有効であると分かったレスベラトロールを中心的に用いて,今後の研究を推進していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,ヒト歯肉上皮細胞を用いた研究をさらに推進していく予定である。抗がん剤であるCisplatinと抗酸化物質であるレスベラトロールを投与し,酸化ストレス (活性酸素種),炎症性サイトカインやアポトーシスの観点から研究を進めていく。その手法としては,ウェスタンブロットやELISAを用いたタンパクレベル,real-time PCRを用いたRNAレベルでの実験を行い,抗がん剤の作用と抗酸化物質による効果を検討していく予定である。 また,抗癌剤を投与することによる口腔粘膜炎モデルを,動物実験によって作成する。そこに抗酸化物質であるレスベラトロールを摂取させたときの効果についての研究も併せて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 3月に納品となり,支払いが完了していないため。 (使用計画) 4月に支払いが完了する予定である。
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