研究課題/領域番号 |
21K10273
|
研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
竹田 飛鳥 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (70885144)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | オンライン診療 / 歯科医療提供体制 / 新型コロナウイルス感染予防対策 / アクセシビリティ |
研究実績の概要 |
医療サービスへのアクセシビリティが良く、新型コロナウイルス感染対策としてフィジカルディスタンスも確保できるオンライン診療は、日本で急速に議論が進んでいる。本研究目的は、歯科診療所を対象とした新しいオンライン診療モデルを構築、検証し、その安全性や有効性の課題を確認することで、歯科領域のオンライン診療を議論するための基礎資料を得ることである。 本年度は、一般社団法人埼玉県歯科医師会(埼玉県歯)の協力を得て、現時点の歯科領域のオンライン診療実施状況を把握するとともに、オンライン診療実施事例の収集を行った。まず、埼玉県歯会員の歯科医師2,475名を対象に、令和4年1月28日から2月10日の期間に、郵送法による自記式アンケート調査を実施した。調査項目は、基本情報(年齢、性別等)、オンライン診療制度の認識、ICTを活用した診療や患者相談の実施、オンライン診療の導入予定、オンライン診療実施の障壁である。次に、前述のアンケート調査にて「オンライン診療を実施している」と回答した歯科医師の従事する歯科診療所(歯科医師・歯科衛生士等)等を対象に、ヒアリング調査を実施した。 その結果、アンケート調査でオンライン診療制度の認識割合は77.5%と高かったものの、オンライン診療を含むICT活用した診療や相談の実施割合は5.6%であった。回収率が低いため、回答者のバイアスが生じている可能性が大きいが、現時点では歯科診療所においてオンライン診療は普及していない状況が明らかになった。ヒアリング調査では、対面診療と組合わせて、抜歯前の医療面接や歯科矯正中の診療説明、摂食嚥下リハビリテーション等で活用されている実態やその課題が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時には、1年目の本年度に歯科領域のオンライン診療事例を収集し、対面診療と組み合わせたオンライン診療パターンをシミュレーション、歯科診療所向けセルフチェックリストの作成を行う予定であった。しかし、歯科診療所におけるオンライン診療実施の実態を把握するため、事例収集前に急遽、歯科医師を対象としたアンケート調査を追加で実施した。そのため、当初の研究計画より進捗に遅れが生じたが、本研究に必要なオンライン診療を実施する上での課題や、今後の展望がより明らかとなった。また、それらを踏まえた上でヒアリング調査を実施し、有益な事例収集を行うことができた。 本年度に取り残したオンライン診療パターンのシミュレーションや、歯科診療所向けセルフチェックリストの作成は、既に終えた事例収集の活用により、次年度に円滑に進むと予想される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、収集した事例を参考に、対面診療と組み合わせ可能と考えられるオンライン診療例や患者背景等のパターンのシミュレーションを行う。またオンライン診療を導入する歯科診療所向けの環境整備等のセルフチェックリストを作成する。その後、シミュレーション結果から、一般歯科診療を行う歯科診療所が取り入れやすい例示を選定し、診療の流れを示した参照モデルを構築した上で、参照モデルの検証が可能な歯科診療所を選定し、検証を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会参加が、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、オンライン参加となり、交通費の支出が生じなかった。また、ヒアリング調査も現地のオンライン診療実施環境の見学目的のために、歯科診療所等に赴く予定であったが、新型コロナウイルス感染予防対策のためにオンライン実施を余儀なくされ、交通費の支出が生じなかった例があった。次年度は情報収集のための学会参加と、構築したオンライン診療モデル実証のためのPCや周辺機器の購入、関連アプリ使用料に経費を投じる予定である。
|