研究課題
乳癌領域において次々と新薬が開発され、内服の抗癌剤も増えてきている。乳癌のホルモン療法の場合、5年から10年の長期の服用が必要であり、早期の服薬中断は無再発生存期間の低下を認めるとの報告もあり、患者がいかに副作用症状をマネジメントしながら服薬を継続していくかは大きな課題である。本研究では、患者の自己管理能力向上による飲み忘れの防止について解明することを目的に、乳癌の電子患者日誌による服薬管理が飲み忘れ防止につながるという仮説の実証に向けて、服薬記録と日々の症状記録、受診時の記録の3つを兼ね備えた乳癌電子患者日誌(ピンクリボンダイアリー)を開発し、臨床試験を実施することとした。本年度は主にピンクリボンダイアリーを用いた単施設での臨床試験を実施した。対象は再発・進行乳癌患者でCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブ、アベマシクリブを服用中で、ピンクリボンダイアリーを使用でき同意を得た患者70名であり、ピンクリボンダイアリー使用群と通常ケア群の2群にランダム化割付を行った。ダイアリー使用群は3ヶ月間ダイアリーを使用し、両群とも外来受診の際にQOLと体調に関するアンケートを行った。2023年4月25日より登録を開始し、2024年3月1日に登録を終了した。主要評価項目はGlobal health status/QOL (EORTC QLQ-C30)の変化量とし、副次評価項目は、RDI(Relative Dose Intensity), EORTC QLQ-C30の他の指標、服薬アドヒアランス)等とした。現在も一部の患者で試験を継続中である。乳癌診療の場では医師診察前の薬剤師問診を実施し、アドヒアランスの確認と副作用の発現状況について調査を行っている。薬物治療が必要な場合はアカデミック・ディテーリングによる薬剤比較を行い、医師への処方提案を行った。
2: おおむね順調に進展している
昨年度乳癌電子患者日誌の開発と倫理審査承認後から実際の登録開始までに時間を要したが、登録を開始してからはスムーズに登録が進み、予定より早く登録を終了した。臨床試験計画については国際学会であるSan Antonio Breast Cancer Symposium 2023で報告することができた。試験終了次第、順次データクリーニングと解析を実施する予定である。
多職種の協力を得て、現在入力中のデータから順次データクリーニングを行い、早めのデータ固定を目指す。結果の公表についてはSan Antonio Breast Cancer Symposium 2024を目標とする。
人件費が抑えられたため、次年度へと繰越となった。今後の学会発表や論文投稿費用として使用する予定である。
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