研究課題/領域番号 |
21K10288
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小山 由美 日本大学, 薬学部, 講師 (50318458)
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研究分担者 |
豊谷 純 日本大学, 生産工学部, 教授 (70459866)
森長 誠 神奈川大学, 建築学部, 助教 (70536846)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピーチプライバシー / 新規測定技術 / 秘匿化 / 音環境 / 医療施設 |
研究実績の概要 |
会話の漏洩や騒音、聞き間違えなど医療現場で生じる音環境問題は、室空間の音響特性の他に人の活動音を要因とする。医療現場の音環境を評価するためには、環境音に含まれる会話情報の保護と音環境分析を両立する波形収録技術が必要である。我々は人が活動する現場でも環境音収録を可能とする新規手法の確立を目指し研究を続けている。これにより守秘義務等が要求される場の環境音測定が可能となり、人の活動に伴う音環境問題の実態解明につながることが期待される。 新規手法として、当初スマートフォンで作動するプログラムの開発を進めていたが、windows PCタブレットで作動するプログラムに変更して進めている。アプリケーションは会話情報が秘匿化(断片化)された収録音と秘匿化されない収録音の両方が同時にPCに保存されるようプログラムの改良がなされた。これにより、アプリケーションの修正を含め新規測定技術の安全精度と有効性の検証が可能となった。 環境音の評価は波形収録したwave fileを解析した。試験音は医療装置のアラーム音を収録して使用した。騒音計に搭載された波形収録プログラムの収録音を基準としてアプリケーション収録音を解析した。収録したwave fileを周波数分析し、1/3オクターブバンドを比較した。この結果、アラーム音についてはアプリケーションと騒音計でほぼ同一の音圧周波数レベルが見られた。会話の秘匿化の検証は文章了解度試験による検討を行う。文章了解度試験に向けてナレーター(男女)音声を収録したので準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はスピーチプライバシーや守秘義務が要求される場において、会話情報を保護しながら環境音を波形収録する新規手法の確立を目指している。医療現場の環境音を収録するには、秘匿化されたwave fileのみが保存されるプログラムを開発する必要があるが、検証段階のため、秘匿化されないwave fileも同時に保存できるプログラムとして修正し、タブレットPCにインストールして実験に用いた。収録マイク(uTestMic)は昨年検証したものを使用した。秘匿化プログラム(アプリケーション)の開発は豊谷を中心に進めている。医療装置アラーム音、暗騒音、キャリブレーション音をPCアプリケーションにより波形収録し、比較対象として騒音計による波形収録も行った。これらのWave fileを解析した結果、秘匿化(断片化)の有無で音圧周波数レベルは完全な一致ではないものの、ほぼ同一の特性が得られた。一例としてある医療装置アラームの音量を2から4に上げると1kHzの音圧は8dBに、2から8に上げると10dBに上昇した。これは秘匿化されたデータでも同じ結果を示した。アプリの精度確認のための測定・解析は、小山と清水が中心となって進めている。会話の秘匿化の検証は文章了解度試験により行う。文章了解度試験に向け、李等が以前作成し試験に用いた文章をナレーター(男女)音声として収録した(業者委託)。文章了解度試験は森長を中心に準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
医療装置のアラームや人の音声を波形収録し解析すると、秘匿化されたデータも元のデータもほぼ同一の音圧周波数レベルとなった。これまでの解析から、開発中の秘匿化アプリの機能は信頼性があると考えられた。一方、現時点では長時間の収録が難しいなど、今後検証を進めるためにいくつかの改良や新たな機能が必要なことが明らかとなったことから、プログラム修正や機能の追加を進め、収録音を解析し検証を行う。 会話情報の秘匿化の検証は、文章了解度試験用に収録した男女のナレーター音声を用いて試験を行う。 これまでの解析で、秘匿化(断片化)されたデータの1/3オクターブ分析やスペクトログラム解析から、暗騒音と対象音(アラーム音等)のS/N比が大きければ、秘匿化された環境音を確認すること無く音環境の実態を観察することが可能と考えていたが、S/N比が小さく騒音問題が生じるような音環境における対象音の識別限界についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規測定技術の安全精度・有効性検証に伴う、文章了解度試験(心理実験)を行う予定であったが試験音の準備に時間がかかったことと、森長の施設使用時期が合わなかったことから、心理実験は翌年実施する。そのため予定されていた被検者謝金の使用は翌年に変更となった。 国際学会で成果報告を行う計画だったが、新型コロナ感染症流行のため見合わせていた。現在国際学会にエントリーしていることから、学会参加費等の費用は翌年度に変更する。
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