研究課題/領域番号 |
21K10290
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
村木 優一 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (50571452)
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研究分担者 |
豕瀬 諒 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (10868152)
細木 誠之 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (30433254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リアルワールドデータ / 薬剤疫学 / 臨床疫学 / 医療ビッグデータ / 大規模保険請求情報 |
研究実績の概要 |
「仮説をたて、得られた基礎研究の結果から導き出される患者への有用性は実際の患者で本当に得られるのか、また、日常的な臨床から考えられた疑問は実際に治療された大規模な患者集団から評価できるのか」。我々は、その問いを解決するため、日常の診療から集積される患者さんの治療データと総称されるリアルワールドデータ(RWD)を用いて検証することを目的とした。 まず、第1に既に本学の病態生理学分野での基礎研究により得られた仮説をRWDを用いて検証した。本学病態生理学分野の細木は、肺がん、 卵巣がん、乳がんなど様々ながんに用いられているタキサン系抗がん剤は、マウス細気管支線毛細胞の運動が抑制されることを線毛機能評価システムにより明らかにした(日本呼吸器学会誌7(s uppl) : 194-194, 2018)。そのため、タキサン系抗がん剤の投与患者では、細気管支線毛細胞の運動抑制に伴い呼吸器感染症に 罹患しやすいことが予想された。そこで、RWDを用いてタキサン系抗がん剤の投与群と非投与群における呼吸器感染症の発現率を患者背景を調整した上で比較した。その結果、その仮説と同様にタキサン系抗がん剤を投与された患者では、呼吸器感染症発現率が非投与患者に比べて有意に高く、検証できた(公表準備中)。一方、臨床的に悪性リンパ腫治療後に二次がん発症例を経験した事例からRWDを用いて検証した。その結果、リツキシマブにベンダムスチンを加えた治療が2次かんのリスクとなることを検証できた(Hematol Oncol. 2023 Feb 15. doi: 10.1002/hon.3128.)。本研究の成果は、基礎や臨床での仮説の検証を容易にし、実際の患者さんへ早期に貢献することが期待され、RWDの新たな活用法の1つとして国民へ還元できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2008年4月から2020年12月までに、複数の対象薬剤のうち、いずれかの処方が1度でもある患者を抽出し、約8万人の対象から除外基準に応じて分析対象をそれぞれ、3656例、969例とした。両群の患者背景をPSマッチングを用いて調整し、最終的に両群862例に対して比較を行った。その結果、種々の交絡は差を認めなかったが、呼吸器感染症の発現率はDTX群(22.5%)の方が、対象群(13.8%)と高く、多変量ロジステック回帰分析においてもDTXの選択が呼吸器感染症のリスクとなることが示された(第143回 日本薬学会にて発表)。 また、臨床的に悪性リンパ腫治療後に二次がん発症例を経験した事例からRWDを用いて検証した。適合患者5234例に対して二次がんの発生率は11%であり、特に骨髄異形成症候群が1.7%と最多であることを明らかにした。また、リツキシマブにベンダムスチンを加えた治療が他のリツキシマブを用いた治療に比べて有意に二次がんのリスクとなることを検証し、Hematol Oncol. 2023 Feb 15. doi: 10.1002/hon.3128.に公表した。 現在、学会発表を行った内容を公表に向け準備しているため、上記判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に計画は遂行できており、公表に向け、優先順位をあげて取り組む。先の細木らが基礎研究で得られた結果の追加実験の必要性もあることから、基礎研究の遂行に支障が無いよう適宜会議等を頻繁に持ちながら進める。また、現在実施している内容は今後の他の研究への応用などに向けてマニュアル化するなど、体制の整備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度学会発表を行った内容を論文として公表していないため。次年度の英文校正費、追加実験費にあてる予定である。
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