研究課題/領域番号 |
21K10296
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
上村 夕香理 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター, 臨床研究センター データサイエンス部 生物統計研究室 室長 (80548537)
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研究分担者 |
坂巻 顕太郎 横浜市立大学, データサイエンス推進センター, 特任准教授 (30644819)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新興感染症 / 臨床試験 / 主要評価項目 / GPC法 |
研究実績の概要 |
臨床試験において治療効果を適切にかつ迅速に評価するためには主要評価項目の設定が非常に重要である。一般的には主要評価項目は当該疾患の臨床症状を適切に捉えることが可能なアウトカムが1つ設定される。一方で、臨床経過が多岐に渡る新興感染症では、複数存在する重要なアウトカムを主要評価項目として設定することで、治療効果を適切に感度高く評価可能となる。例えば、COVID-19疾患は改善(酸素投与外れる等)する患者、悪化(人工呼吸器導入や死亡)する患者が存在し、いずれのアウトカムも薬効を評価する上で重要である。本研究は、αエラーを有意水準以下に制御した下で、臨床的な重要度を考慮した複数の主要評価項目の設定を提案する。また、提案する主要評価項目および解析手法の統計的性質を評価する。 本年度は、COVID-19を対象に実施された医薬品等の有効性を評価する臨床試験をレビューし、臨床試験で用いられている主要評価項目、副次評価項目、症例数、患者の重症度について論文をまとめた(Sakamaki K, Uemura Y, Shimizu Y. Trials. 2021;22(1):788)。臨床試験はclinical trials.govに登録された406試験が対象となり、患者の重症度に応じて多岐に渡る評価項目が用いられることが確認された。また、複数の評価項目が主要評価項目として設定されている試験が25%程度あることが判明した。新興感染症の臨床試験で治療効果を評価する上では、臨床的な重要度を考慮した複数の主要評価項目の設定が重要であることを支持する結果となった。 さらに、NIH/NIAID主導の国際共同大規模ランダム化比較試験であるACTT-1試験のデータを2次解析として利用するため、ACTT-1データ使用申請書を提出し許可された。併せて、本データを使用するにあたり倫理審査委員会に申請し、承認がおりた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の必要性を支持する論文を作成し、掲載された(Sakamaki K, Uemura Y, Shimizu Y. Definitions and elements of endpoints in phase III randomized trials for the treatment of COVID-19: a cross-sectional analysis of trials registered in ClinicalTrials.gov. Trials. 2021;22(1):788.)。 また、提案法のシミュレーションを実施する上で必要となるNIH/NIAID主導の国際共同大規模ランダム化比較試験であるACTT-1試験のデータを2次解析として利用するため、ACTT-1データ使用申請書を提出し許可された。併せて、本データを使用するにあたり倫理審査委員会に申請し承認がおりた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に公表した論文を踏まえて、COIVD-19を対象として医薬品等を評価する臨床試験を実施する上で、重要と考えられる評価項目を整理する。それら評価項目に基づき、重要度を考慮した複数の主要評価項目を具体的に設定し、その適切性について感染症専門家と協議する。 さらに、設定した複数の主要評価項目をGPC法のαエラーや検出力等の統計的性質についてシミュレーションにより評価する。なお、シミュレーションの設定に際しては、ACTT-1試験のデータを参考にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により国際学会へのオンサイトの参加が出来ず、本年度に持ち越すこととなったため。
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