最終年度は、1.診療科・診療施設に対する保険診療の実態をまとめて、現時点での問題点・課題を抽出し、2.電子カルテシステムに付加する機能の仕様を策定し、筑波大学附属病院の「電子カルテ」システムにおいて実証実験を行う予定であったが、病院情報システムの更新が病院再開発事業に連動して2024年度に実施されることとなった為、実装実験は中止し、その部分は、新システムの仕様に組み込んで新システムの中で実装することとした。また、2023年度厚労省から医療DXの具体的な工程表とその内容・仕様が提示され、診療報酬改定DXに対応する必要も生じている。よって研究の成果は、①大規模病院において保険診療において指摘されやすい項目とその対策、新システムへの実装。②医療DXについての考察の2つで取り纏めた。①2023年の2月から最終年度にかけて、診療施設10部門と13診療科に対して診療録とレセプトを精査し、各診療科医師と連携して検証作業を実施した。検証チームは医師、医事課職員、診療情報管理士などの多職種で構成した。その結果、ほぼ全ての診療科に共通する指摘事項と特定の診療科に特化した事項が判明した。特に共通した記載漏れ対策については指摘事項を検討し、逐次電子カルテ上にテンプレートを作成した。入力必須項目を設定することで要件に詳しくない医師でも適切な保険診療が実施できるように工夫した。テンプレート作成は研究実施期間の3年間で69項目であった。これらは全て2024年5月稼働の新システムに移行し実装される。②医療DXは国が推進する医療改革で、効率かつ医療の質を高めるための施策で、全国医療情報プラットフォーム、電子カルテ情報の標準化(標準型電子カルテの検討)、診療報酬改定DXの三本柱からなるものである。しかしながら医療情報システムの管理運営に携わる視点ではその実現には問題が多い。今回はそれらの問題点を明らかとした。
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