研究課題/領域番号 |
21K10324
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
後藤 由和 金沢大学, 医学系, 准教授 (60282167)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 院外心停止 / 蘇生中止 / 病院前救護 / 医療社会学 / 疫学 / 転帰 |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、消防庁から全国院外心停止ウツタインデータと全国救急隊活動記録データの提供を受け、データ整理と予備的解析を行った。院外心停止が発症した場所が、現場蘇生中止基準のひとつとなるかを検討するため、データ整理を行った。院外心停止の発生場所の特定は、2013年以降の症例(N=879,057)が可能であったが、心停止発生場所は、提供された両データセットからマッチングする必要があり、その作業に膨大な時間を要した。それゆえ、2019年度の傷病者(N=126,271)の54.1%に該当する68,274例に限定して、個々の症例ごとに院外心停止発生場所の特定を行い解析した。多変量解析のひとつである決定木モデル解析の結果、1か月後の死亡予測に対する優先病院前因子の上位は、自己心拍再開・初期心電図心静止・目撃なし・救急隊蘇生時間・年齢・AEDの使用・バイスタンダーの救命処置の順であり、自宅因子(あるいは公衆の場)は上位優先因子では無かった。また、自宅発生例では、通信指令による口頭指導を受け入れる割合が60%と低く、全体のバイスタンダーによる1次救命処置実施率も42%と非自宅発生例(60%)より、有意に低かった。さらに、自宅例は非自宅例と比較して、初期心電図心静止(70% vs 60%)・目撃なし(63% vs 52%)の割合が多く、1か月後生存率(4% vs 7%)・神経学的良好割合(2% vs 4%)は低かった。以上から、自宅あるいは公衆の場因子は、現場蘇生中止基準には適さないと判明した。本年度は、さらに蘇生中止基準の精度向上のため、通信指令の行う口頭指導が蘇生後の転帰に与える影響と小児心停止後の調律変換と転帰の関係について検討し、Eur J Emerg Med・Crit Care・Resuscitation・Resuscitation Plusの各雑誌に論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
場所の因子データをマッチングするために、多大な時間を要したが、対象数が7万例弱に達した時点で解析した。その結果、次年度への方向性が見いだせた点で本年度の進捗状況はおおむね順調と判断した、特に、院外心停止の発生場所の因子が、現場蘇生中止基準のひとつにならないことが判明したことは、予想外であった。しかし、精度の高い院外心停止基準を作成するための因子の一部を分析し、論文をまとめることができたことは、順調であったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
精度の高い現場蘇生中止基準には、蘇生時間因子が重要であることが今回の解析から判明した。このことから、現行法に適した体制下での病院到着時点で判断する精度の高い蘇生中止基準をあたらに開発・検証することを計画したい。今後は、特に、救急隊実施の蘇生時間あるいは心停止から病院到着までのバイスタンダー救命処置時間を含めた総低流量灌流時間を蘇生中止基準の因子として、活用できるかどうかを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を予定していた国際学会がすべてWeb開催となったため、学会参加旅費相当額が次年度使用額の生じた主な理由である。次年度以降に開催される国際学会の参加費用とオープンアクセス投稿代金の一部に補充する予定である。
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