研究実績の概要 |
(A)自由診療で提供されている細胞治療の説明文書分析:厚労省がウェブサイトで公開する細胞治療の説明文書約3,000件の質的内容分析を行った。R4年度は自由診療の再生医療に国が支払う還付金の総額を試算し、2017年又は2018年の還付金総額は年間1億円~2,382億円と推定した。国の予算に関わる社会の問題でもあるため、国は治療の安全性・有効性の担保に責任を持ち、法改正も検討するようStem Cell Reportsで提言した。 また、再生医療法下で現在どのような治療が提供可能なのか、2,377医療機関による3,467件の説明文書を分析したところ、中には科学的エビデンスに乏しいものが含まれていることを明らかにした。問題の背景には、研究開発から治療の実現に至るプロセスで重要となるコンセプトを明確に規定していない再生医療法の構造的な課題があるとCell Stem Cellで論じた。 (B)細胞治療に関するKAP調査:ヒト細胞を用いた治療に関する一般市民の認知度、関心、受療行動を明らかにすることを目的に、R4年度は質問紙の作成に先立つ仮説の設定を検討した。 (C)ヒト胚を用いた基礎研究に関する意識調査:一般市民約4,000名と日本ゲノム編集学会に所属する研究者約100名を対象にインターネットを用いた質問紙調査を実施したところ、目的如何に関わらず、研究者よりも一般市民の方が、人を対象とするゲノム編集技術の利用に抵抗を抱いていることが明らかとなった。また、両者に共通して、エンハンスメントやデザイナー・ベビーにつながるゲノム編集の利用は支持されない傾向が見られた。R4年度は国際誌への投稿準備を完了した。
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