研究課題/領域番号 |
21K10342
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
中田 はる佳 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 研究員 (10592248)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | クラウドファンディング / 患者・市民参画 / 研究倫理 |
研究実績の概要 |
今年度は、文献調査と国内実態調査の準備を行った。まず、北米、カナダ、イギリス、アジア諸国における事例を収集した(継続中)。特に北米では、医療に対する公的保険制度が広く取られておらず、個人の治療費をクラウドファンディングで集める事例が多く見られた。また、カナダやイギリスなど、医療に対して公的資金による支援制度が広く取られる国であっても医療費に関するクラウドファンディングの事例が見られる。その理由として、公的資金を用いた政府による支援が不十分であることなどが指摘された。日本以外のアジア圏を中心とした医療費や子どもの教育に対するクラウドファンディングプラットフォームが運用されており、メディカルクラウドファンディングの個別事例が多く掲載されている(例:GIVE.asia https://give.asia/) 。北米等のみならず、アジア圏でもメディカルクラウドファンディングの需要や実績があることがうかがえる。国内にも目を向けると、研究資金の調達や医療機関の設備整備の目的でクラウドファンディングが行われる事例もあり、多様な形態がありうることが予想された。次に、研究参加者が費用を払って参加する臨床試験(pay-to-participate trial)については、研究の社会的価値、科学的な質、搾取、正義の観点から課題が指摘されていた。これらの課題は、メディカルクラウドファンディングのあり方を検討する上でも対応すべきと考えられる。さらに、患者・市民参画(patient and public involvement: PPI)については、国内での機運が高まっていることから予定より早く文献調査に着手した。新型コロナウイルス感染症流行拡大により各種活動のオンライン化が進み、オンラインによるPPIの実践が蓄積されつつあることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査の過程でアジア圏を中心としたクラウドファンディングプラットフォームがあることが判明し、新たな情報源として活用し得ると考えた。これまでは、国内のプラットフォームに焦点を当てることとしていたが、アジア圏との比較も考慮しつつ事例や文献収集を進めているため、予定していたより作業が増え、進捗がやや遅れることとなった。他方で、PPIに関する文献調査は計画より1年早く着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に新たなプラットフォームが判明し、情報源が充実して調査に厚みが増すと考える。来年度以降は、文献調査の優先順位を再検討した上で、作業の効率化を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が収束せず、各種研究会や学会等がオンラインで実施されたため旅費がほぼ発生しなかった。また、研究の進捗がやや遅れ、初年度で発表に至る成果をまとめることができなかったため、国内外の学会発表に伴う諸費用が発生しなかった。また、今年度はウェブでの情報収集を中心に行ったため、書籍の購入が予定より少なかった。来年度は、国内外の学会への参加や今年度に購入しなかった書籍を購入する予定である。また、各種活動のオンライン化が促進されていることから、オンライン活動により適した研究環境を整備する予定である。
|