研究課題/領域番号 |
21K10348
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
神原 容子 お茶の水女子大学, ヒューマンライフイノベーション研究所, 特任助教 (90894791)
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研究分担者 |
三宅 秀彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (40297932)
佐々木 元子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90725665)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゲノム医療 / 医療経済 |
研究実績の概要 |
ゲノム医療は進展が著しく、実臨床に活用する場面が急速に拡がっている。ゲノム医療は有用であるが、高額な医療負担が発生する。現在の日本では、誰もがゲノム医療を受けられる経済的仕組みが構築されているとは言えず、選択肢が限定される可能性がある。本研究では、ゲノム研究における費用負担配分に着目し、ゲノム医療の実施に妨げになる要因の調査を行う。ゲノム医療における費用負担配分に着目し、ゲノム医療を必要とする人が等しく受けられるよう体制構築について提案する。本研究の成果は、国民全体がゲノム医療の恩恵を受け、さらに医療資源の配分の適正化と効率的なゲノム医療の実施に寄与すると考えられる。 本研究では、日本でのゲノム医療における費用配分およびゲノム医療の提供と経済的状況の関係について、医療機関の経済的負担やゲノム医療の方針選択に経済的理由が影響しているのか、ゲノム医療を受けたい人が経済的理由からゲノム医療を差し控えた経験があったのかなどをゲノム医療の専門家および一般市民を対象に調査し、ゲノム医療の費用配分の問題点を明らかにすることを目的とする。 令和3年度は、ゲノム医療の専門家である臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーを対象に、医療機関の経済的負担や方針選択に経済的理由が影響するかどうか、ゲノム医療を受けたい患者が経済的理由からゲノム医療を差し控えたような経験があったかどうかなどの項目を含めた質問紙票の原案を作成した。倫理審査承認後に郵送法にて実施する。この調査で臨床現場でのゲノム医療の医療配分の課題を明らかする。さらに、一般市民を対象とした調査で、ゲノム医療において経済的状況によって医療を差し控えた経験があったかどうかなどの調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度に計画していた、ゲノム医療の専門家を対象とした質問紙調査については、ゲノム医療と経済格差に関する先行研究がなく、質問紙票の作成にあたっては成書やウェブ資料の確認を行い、さらに研究協力者への意見聴取などを行った。そのため、質問紙票の内容の妥当性の検討にかなりの時間を要した。質問項目には、ゲノム医療で関与している領域、施設での診療状況、ゲノム医療の対価に対する意見、患者の経済状況を理由に診療に困難や葛藤を生じた経験などの質問を含めた。質問紙票の原案は、パイロット調査を実施した後に、倫理審査委員会に申請を行う予定である。また倫理審査委員会承認後に全国遺伝子診療部門連絡会議および日本認定遺伝カウンセラー協会に連絡し、承認を得てから、臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーに郵送法で調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム医療の専門家を対象とした質問紙調査については、令和4年度に倫理審査委員会の承認後、直ちに実施する。当初は遺伝医療部門の代表者である臨床遺伝専門医指導医のみを対象とし、回収率が低い場合に対象を拡大して再調査する計画であったが、初めから臨床遺伝専門医指導医および認定遺伝カウンセラーを対象とした調査へ変更する。質問紙票作成とデータ解析には研究代表者、研究分担者、研究協力者に大学院生の協力も得る。この調査で課題を明らかにした後に、一般市民を対象とした調査に繋げる。令和4年度に、民間のリサーチ会社に委託し、一般市民1,000人を対象にウェブ調査を実施する。調査項目に生活環境、ゲノム医療の認知度・印象、ゲノム医療への支払いの許容金額、ゲノム医療を断念した経験などを含める。質問紙票原案は内容の妥当性の検討を行った後にリサーチ会社と調整後に調査を実施する。データは統計解析ソフトなどを用いて記述統計および要因分析を行い、一般市民におけるゲノム医療の実施に影響する経済的事項、倫理的課題を検討し明らかにする。さらに、令和4年度後半に遺伝学的検査を受託する衛生検査所へのインタビュー調査を予定している。検査会社・検査所3か所程度を訪問し、インタビュー調査を実施する。調査項目には、遺伝学的検査の受注件数、解析作業に要する人員数、作業内容と価格の採算などの意見を含める。必要に応じてインタビュー対象者を追加する。インタビューガイドの原案は妥当性の検討を行った後、研究代表者がインタビューを行う。その内容は質的分析を行う。 令和5年度に医療経済学の専門家などからゲノム医療の経済的格差について意見を聴取する。インタビューガイドの原案の妥当性の検討を行った後、研究代表者がインタビューを行う。その内容は質的分析を行う。 研究成果については、遺伝関連学会の学術集会で発表し、論文化も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた調査では、遺伝医療の専門家である臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーを対象に郵送法による質問紙票調査を実施する予定としていたが、調査実施が遅れており、消耗品である上質紙、郵送用・返信用封筒、郵送料が未購入であった。また、データ解析用のPCおよび解析ソフトウェアについても調査実施が遅れているために未購入である。令和4年度に質問紙票調査を実施することにしており、倫理審査委員会の承認後に直ちに購入し、調査を実施する。
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