研究課題/領域番号 |
21K10351
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
赤池 雅史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90271080)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 診療参加型臨床実習 / 汎用的能力 |
研究実績の概要 |
本研究では、臨床実習学生が診療参加型臨床実習を行うための基盤となる汎用的能力について何が不十分であるか、さらにその状況を踏まえて医学教育をどのように進めるべきかということを学術的「問い」として設定した。令和3年度は、臨床実習学生が診療チームで一定の役割を果たしながら学修を進める上で、どのような課題があるかを明らかにするため、学内必修の診療参加型臨床実習の履修を修了した5年次および6年次を対象として、担当患者の診察、診療録記載、指導医へのコンサルテーション、診療チームへの参加、カンファレンスでの症例提示等の診療参加において、無記名の自己評価アンケート調査を実施した。さらに、すべての診療参加型臨床実習の履修を修了した6年次を対象として、卒業時コンピテンス・コンピテンシーの達成レベルにつき自己評価を実施した。診療参加型臨床実習における学生の自己評価(1~5点)では、病歴聴取3.74点、身体診察3.74点、診療録記載3.64点、症例提示3.84点、診療手技3.81点、診療チームへの参加3.88点であり、診療録記載の評価が最も低かった。また、自由記載では、一部の看護師や指導医とのコミュニケーションに困難を感じている事例が見られた。卒業時コンピテンス・コンピテンシーの達成レベルについては、医療経済・政策・保険診療の理解と保健・医療・福祉・介護および行政等との連携協力、未知・未解決の医学的問題の認識とその解決、仮説の立案と科学的手法を用いた検証、適切な統計手法の選択と解析、国際的コミュニケーションや英語を用いた情報の入手・理解・発信が他の項目よりも低かった。これらの結果から、現在の臨床実習学生においては、他の職種・組織・世代とのコミュニケーション力・協働力、診療録記載の基盤となる文章力、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力、国際力等の向上が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では研究期間内に、1)診療参加型臨床実習を行う上での臨床実習学生の問題事例の収集・分析、2)臨床実習学生に求められる汎用的能力の解明、3)教養教育、基礎医学教育における新たな教育プログラムの導入とその検証を行う計画である。令和3年度は、研究計画通り、診療参加型臨床実習の履修経験のある医学生を対象として、担当患者の診察、臨床推論、診療録記載、指導医へのコンサルテーション、メディカルスタッフとのコミュニケ―ション、カンファレンスでの症例提示等の診療参加において、臨床実習学生が困難を感じた問題事例について自記式質問用紙を用いた無記名のアンケート調査を行うことができ、これらの調査では、現在の臨床実習学生が修得しているコミュニケーションスキル、協働力、文章力、プレゼンテーション力、数量的スキル、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力、メタ学習能力等の汎用的能力のレベルについてデータを収集することができた。得られたデータの計先により、現在の臨床実習学生においては、他の職種・組織・世代とのコミュニケーション力・協働力、診療録記載の基盤となる文章力、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力、国際力等の向上が必要であることを示すことができた。これらの結果をもとに、今後の計画である、指導医やメディカルスタッフを対象とした調査、診療参加型臨床実習の履修経験のある医学生、指導医・看護師等のメディカルスタッフを対象とした構造化インタビューによる情報収集について、準備を整えることができた。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、診療参加型臨床実習を履修した学生を対象として、引き続きデータ収集を行うとともに、指導医・看護師等のメディカルスタッフを対象とした情報収集も行い、そのデータ分析を進めることで、臨床実習学生に求められる汎用的能力をさらに明らかとする。また、アンケートから得られたデータをもとにカテゴリー分類を行い、臨床実習学生が問題を生じやすい状況・事例を明確化するとともに、その背景にある汎用的能力の不足を抽出する。データ収集においては、新型コロナウイルス感染症の流行状況をみて、長時間の対面インタビューが可能な状況になれば、診療参加型臨床実習の履修経験のある医学生、指導医・看護師等のメディカルスタッフを対象とした構造化インタビューを行う。自由記載や構造化インタビューによる情報については、質的分析の手法を用いて、問題事例や課題の背景にある臨床実習学生の汎用的能力の問題点を抽出する。これらによって、令和5年度以降には、医学科学生のみが履修し医学科教員が担当している教養教育科目、基礎医学系実験科目および研究室配属において、各アウトカムと汎用的能力との関係を明確化したカリキュラムチェックリストを作成し、臨床実習学生に必要な汎用的能力との関連性が強い科目については、汎用的能力の修得と評価に適した双方向型教育、グループワーク、体験型学修、ポートフォリオ評価等の導入を推進する。この新たな教育プログラムを履修した学年が、学内での診療参加型臨床実習を修了する時点で同様の調査を行い、診療参加型臨床実習の改善に繋がっているか否かを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会に参加して最新の情報を収集する計画であったが、COVID-19感染症流行の影響により、すべてがオンライン開催となり、当初予定していた旅費の執行が不要となったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、令和4年度はCOVID-19感染症の影響が軽減すると予想されることから、学会参加のための旅費、データ収集・分析に必要な物品費等で使用し、研究を遂行する予定である。
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