研究課題/領域番号 |
21K10376
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
板井 孝一郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70347053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臨床倫理コンサルテーション / 臨床倫理サポート / 臨床倫理コンサルタント / 患者安全 / 医療安全 / コンピテンシー |
研究実績の概要 |
日本臨床倫理学会による第1回臨床倫理認定士養成研修上級編(2020年1月18. 19日開催)にて「上級臨床倫理認定士」の認定を受けた、28医療機関64名に対し研究参加へのリクルートを行い、20医療機関38名の同意を得て半構成的インタビューを実施した。インタビュイーの基本情報は以下の通り。 (医療機関の属性)民間病院6・公立病院7・大学病院4・その他3、病床数:84床~1400床、特定機能病院認定:4機関 (対象者情報)医師:19名・看護師:17名・事務職:1名・社会福祉士(倫理学者):1名、職種の経験年数:3年9ヶ月~40年7ヶ月、CECの経験年数:6ヶ月~10年3ヶ月、CECの経験件数:2件~120件・平均値32件・中央値29件 質的分析の結果、逐語録からコード2092が生成され、階層化によりサブカテゴリ49、カテゴリ11が抽出された。11のカテゴリについては次の通り。1.臨床倫理コンサルテーションに臨む場合の構え、2.倫理的推論の下地となる考え方、3.相談者の持つ不安に対する適切なアプローチ、4.潜在化している倫理問題の掘り起こし、5.初動時の対応、6.事例のスクリーニング、7.カンファレンスを開くための事前準備、8.カンファレンスでのサポート 、9.フィードバックの方法、10.フィードバック後のフォロー、11.臨床倫理コンサルテーションの客観的評価
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ情勢のため、英国への渡航は難しい状況であり、その点では計画以上に進展しているとは言えない。しかし、半構成的インタビューはすでに終了しており、①逐語録の文脈から、インタビュイーの表現を用いて「コード」を作成、②類似しているコードをまとめ、それらを説明する「サブカテゴリ」を生成、③サブカテゴリを集約し抽象化した「カテゴリ」を抽出、④1例目の逐語録について①②③の手順で「コードブック」を作成し、2例目以降、1例目のコードブックを用いてカテゴリ・サブカテゴリの類似性を比較、2例目以降に新しいカテゴリ・サブカテゴリが抽出された場合、既出ではないことを確認した後コードブックに追加する作業もおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の調査結果を踏まえ、米国・英国の臨床倫理コンサルテーションに求められるコア・コンピテンシーと比較対照しながら考察を行う。米国ASBH報告書「初版」(1998)では、コア・コンピテンシーは「知識(knowledge)」、「スキル(skills)」、「性格(character)」に区分されていた。しかし、第2版(2011)においては、3番目の「性格(character)」という用語選択をめぐって報告書を作成したタスクフォース・メンバーのあいだでも「倫理コンサルテーションに関連する用語としては、問題点の多い用語選択」であるとの見解が示され、「性格(character)」では不適当であるとの結論から、「特性、態度、行動(Attributes,Attitudes, and Behaviors)」と改められるに至っている。英国においても、特にこの3番目に関しては、当初は「個人の性格(personal character)」と記されていたが、やはり米国と同様の議論がなされている。コロナの世界情勢次第ではあるが、できる限り渡英し、特にコア・コンピテンシーの3番目のAttitude(態度)の内容、及び倫理相談に訪れた相談者に対するコミュニケーション・スキルと、倫理的推論(moral reasoning)の育成トレーニングのあり方に関する検討にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの世界的パンデミックにより、渡航計画に支障が生じ、燃油サーチャージの上昇に伴う航空運賃の値上げ等、物価上昇を見越して、繰り越しを行う判断とした。次年度においては、計画通りに渡英をすることで予算執行を行いたいと考えている。
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