研究実績の概要 |
妊娠中の母親とその出生児から収集された血清を用いて自己抗体の分析を行い、母親と出生児の質問紙調査票・医学的データによる健康指標との関連性について、横断的かつ縦断的な解析を実施し、血液レベルで検出できる新たな発症予測自己抗体バイオマーカーを発見することである。 対象者は、エコチル調査南九州・沖縄ユニットセンターの熊本大学対象地域で登録された3,082人のうち、研究に同意が得られた1,353人とした。抗核抗体は、妊娠初期の残余血清試料から、HEp-2 細胞を用いた間接蛍光抗体法により、血清希釈40倍をカットオフとして評価した。社会疫学的データおよび化学物質曝露データは、エコチル調査の自記式質問票から入手した。データ欠損のあった118人を除外し,妊娠第1期(平均13.3週,標準偏差3.5)の妊婦1,235人を解析対象とした。 解析の結果、抗核抗体陽性率は17.3%で,そのうち抗体価40倍が80.8%を占めた。対象者は,雇用の有無に関わらず複数の化学物質に曝露されていた。4種類の化学物質においては,週1回以上の曝露で抗核抗体陽性のオッズ比が有意に上昇した(灯油類 [調整オッズ比 (adjusted odds ratio; AOR) 2.11; 95%CI 1.03-4.34]; 塩素漂白剤 [AOR 1.97; 95%CI 1.10-3.54]; 有機溶剤 [AOR 5.34; 95% CI 1.40-20.36]; コピー機・レーザープリンター [AOR 1.73; 95% CI 1.17-2.52] 。抗核抗体は日常的な化学物質曝露マーカーの一つとなり得る可能性が示唆された。
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