研究課題
本研究では、各種臨床材料から分離されるグラム陽性球菌を対象としてそれらへのリネゾリド耐性化傾向、耐性菌、新規耐性遺伝子の分布状況を明らかにし、耐性菌の遺伝子型等の疫学的特徴を明らかにすることを目的としている。今年度は継続的に収集、保管している北海道における黄色ブドウ球菌分離株の解析と、過去に分離されたブドウ球菌種の薬剤感受性についての調査を行った。北海道における2023年4月~12月の血流感染由来黄色ブドウ球菌(MRSA163株、MSSA138株)では、リネゾリド耐性菌および耐性遺伝子陽性株は検出されなかった。さらに今まで臨床材料、健康人、食肉から分離され解析された各種ブドウ球菌株に対し、リネゾリドへの耐性化傾向を調べるため、各菌種におけるMICの分布を調査した。ブドウ球菌ではMICが4μg/ml以下では感受性でありMICが0.5μg/ml以下のものが殆どであるが、MICがやや高い2μg/mlのものが見られる。そこでMIC値2μg/mlを示す菌株の割合を菌種毎に調べたところ、北海道における血流感染分離株MRSAでは5~11%、MSSAでは31%であった。一方、S. argenteusでは24%、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)では34%とやや高い値を示し、特にS. saprophyticus, S. pasteuriにおける割合が高かった。この結果より菌種によりリネゾリドへの耐性化傾向が異なることが示唆された。さらに本研究期間中、共同研究先のバングラデシュで最近分離された黄色ブドウ球菌を解析する機会を得た。MRSA61株、MSSA109株の中で1株のMRSAにcfr, fexA遺伝子を検出した。そのような黄色ブドウ球菌は日本では殆ど見られないが、海外からの伝播とその国内における拡がりには注意が必要であると考えられた。
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IJID Regions
巻: 10 ページ: 132-139
10.1016/j.ijregi.2023.12.006