研究課題
医療現場で問題となる薬剤耐性菌について、特にカルバペネム耐性グラム陰性桿菌が問題視されている。その耐性機序としてカルバペネマーゼが重要であるが、最終年度はこれを産生しない耐性株について、その耐性機序の解明を目的とした。遺伝学的解析ならびに生化学的解析によってその多くが外膜タンパク質のポーリンに点突然変異や転位因子によるフレームシフトによる機能欠損が起きていたことが判った。外来遺伝子の獲得は偶発的なものであるが、菌株自身の遺伝子変異はどの株にも起こりうるものであり、その変異獲得のメカニズムや制御は重要であることが判った。研究期間全体ではカルバペネマーゼ産生菌についての解析も実施した。多剤耐性Providencia rettgeriの耐性機序を解析したところ新規カルバペネマーゼ遺伝子IMP-70を保有していることが判った。さらにESBL遺伝子とAmpC β-ラクタマーゼ遺伝子も同時に保有していた。これら耐性遺伝子はプラスミドにコードされており、複雑に組み合わさってこの耐性プラスミドが構築されたことが判った。その他には本邦で初めて分離したカルバペネマーゼNmcA産生Enterobacter ludwigiiについて発現機構を解明した。誘導型のNmcAがカルバペネムに高い耐性を示すのは、カルバペネムに対する高い分解活性のみならず、カルバペネム自身が酵素産生の高い誘導能を有していることが判った。本菌株の報告例は世界的にも少ないため、発現機構を考慮した検出方法も開発した。その他、家畜(牛、豚)の分離株について解析したところカルバペネム耐性菌は検出されなかったが、医療現場からも多く検出されるESBL産生菌が多く検出された。家畜由来株は臨床分離株とゲノム型などの共通性は認められなかったが、家畜農家との間で共通した株が存在しており濃厚接触により拡散される可能性が示唆された。
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