研究実績の概要 |
日本全国の健康保菌者由来EHEC のうち、デンカ生研の抗血清で型別不能となった567株のstx subtype, eae, hly, ast, aggR, bfpAの有無、 遺伝子によるO血清型別を実施した。stx1のみを保有する株ではstx1aが139株と最も多く、54株でeaeを同時に保有していた。一方、stx2のみ保有する株、stx1+stx2保有株ではほとんどeae保有株は認められなかった。hlyAはstx1, stx2, stx1+stx2いずれにもみられた。astはstx2に多くみられた。stx1保有株血清型で型別不能株で69株あり、16株がeae陽性であった。O-70, O-71, O-84, O-118, O-124, O-150, O-156, O-186は全てeae陽性で、中でもO-156は16株全てがeae陽性であった。stx2保有株血清型別では最も多かったのはstx1保有株同様、型別不能株で134株あったが、eae陽性は2株に留まった。O-80, O-92は、株数は少ないものの、全てeae陽性であった。stx1+stx2保有株における血清型別では、最も多かったのはやはり型別不能株で19株あったが、eae陽性はみられなかった。stx2で最も多かったstx subtypeはstx2eであり、その122株の血清型別では型別不能株で67株、継いでO-100, O-9, O-9/O-89, O-89などであった。これらはいずれもeae, hlyA, aggR, bfpAを保有していなかった。 健常保菌者由来で多くを占めるO抗原血清型不明EHEC株には非常に多様な種類の株が含まれており、40%は遺伝子による血清型別でも型別不能な株で、これらは未知の血清型と考えられる。eae保有株は12%のみであるがstx1では39%と比較的高率にみられた。stx2ではヒトからの分離例がほとんど知られておらず、病原性が極めて低いとされるstx2eが39%と最多で、eae, hlyA, aggR, bfpAの病原因子も保有していなかった。これらのことから、健常保菌者由来O抗原血清型別不能株の多くは病原性が低い株が多く含まれていた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、MLST解析、一部のstx2e保有株の全ゲノム解析、及び、発症者からの分離頻度の高いO-26, O-103, O-111, O-157, O-145, O-165などの健常保菌者由来株との比較検討を行っており、薬剤感受性試験、耐性遺伝子の分布状況も併せて調査を行って行く。
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