研究実績の概要 |
EHECの病原因子は志賀毒素 (Stx)であるが、近年、新たなStxとして、Stx2fが急増している。そこで2021年度に無症候性保菌者から分離されたstx2f保有EHEC 41株について、その病原性、遺伝子背景、薬剤感受性、耐性遺伝子について検討を行った。stx2f保有41株のうち、大腸菌は38株で3株は、類縁のEscherichia albertiiであった。これは無症候性保菌者から分離されたstx2f保有E. albertiiの世界初めての事例である。大腸菌38株の内訳では、血清型O-105, MLST 13581が15株、 O-63, MLST 583 4株、O-148 MLST 11102 3株、同, MLST 3558 2株、O-109, MLST 40 3株などとなっており、eae+が72%と大半を占めていた。また、他の病原因子ではast+が49%に見られ、病原性は高いことが示唆された。E. albertiiはそれぞれMLST 2683, 383-like, 5991-likeで、いずれもeaeを保持していた。薬剤感受性ではE. albertii 1株、大腸菌2株がESBL産生菌であり、いずれもblaTEM-1保有株であった。stx2fは臨床検査で行われるstx検査では検出できず、その実態はほとんど明らかになっていない。今回の結果から、stx2f保有株の高い病原性と、一部にみられた薬剤耐性から、stx2f保有株の臨床現場での感染実態などを早急に調査する必要性があると考えられ、これを検出できるシステム構築が喫緊の課題である事が明らかとなった。
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