研究課題/領域番号 |
21K10414
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
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研究分担者 |
渡部 久実 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (50143756)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | RSウイルス / 来日渡航者数 / 気候 / 公衆衛生対応 / 流行変化 / 新型コロナウイルス感染症 / 全国調査 |
研究実績の概要 |
令和2年と3年度(2020-2021年度)は、全国の小児科医療機関(北海道・新潟・東京・三重・滋賀・奈良・山口・熊本・沖縄)から、RSウイルス迅速診断キット陽性の検体を収集し、新型コロナパンデミック下での、各地のRSウイルス流行状況を調査した。
2年間で合計491件の上気道検体を採取した。新潟大学において、RT-PCRを実施したところ、382件(77.8%)にRSウイルスが検出された。ウィルス型別では、A型が46.4%、B型が31.4%であり、全体的にA型優勢であった。地域別には、北海道・新潟県・奈良県・山口県の4か所ではA型優勢、東京都・三重県・滋賀県・熊本県・沖縄県の5か所ではB型優勢と地域による差がみられた。2020年にはRSウイルスは全国的にほとんど検出されなかったが、10ー11月に沖縄県でB型RSウイルスの流行がみられた。 2021年には、全国的に3月頃から流行が始まり、7月にピークを迎え、11月に流行が収束した。地域別にみると、西日本から3ー4月頃に流行がはじまり、徐々北へ移動していくパターンが見られた。最北端の北海道は、流行開始が5月、ピークも8月と、調査地点の中で最も流行が始まるのが遅かった。新型コロナ流行以前、日本では、ここ数年間、6月頃から流行が始まり、9月ごろに流行ピークが見られていたので、2020年と2021年の流行は明らかにこれまでと異なる。2020年には RS ウィルスの流行が日本ではほとんどなかったにも関わらず、2021年には早期に流行が開始となったことは、新型コロナウィルスの流行が影響していることは明らかである。その原因としては、公衆衛生対策(渡航・移動制限やマスクの着用、ソーシャルディスタンシングなど)が、 新型コロナと同様の呼吸器感染症である、RS ウイルス感染症を強く抑制したのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国の小児科医に協力を依頼した国内の RS ウイルス検体の収集に関しては予定通りで問題なく、各地から400件以上のRS ウイルス感染症疑いの上気道検体が採取された。また、新潟大学におけるリアルタイム PCR を用いた RS ウイルスの検出も順調に進んでいる。現在、ウイルス表面タンパクで、抗原性に関係するG タンパクの遺伝子解析を進めている。今後は次世代シークエンスを用いた RSウイルスの全長解析を行う予定である。 ウイルス学的な解析は順調であり、特に進捗に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究進捗は概ね順調であったため、令和4年度も引き続き全国の小児科医に依頼して RS ウイルスの検体採取を進め、各地でRS ウイルスがどのように流行したのか、地域的な相違を見る。さらにRSウイルス検体を使い、次世代シークエンスを用いたウイルスの全ゲノム解析に着手する。海外の株と日本の株の遺伝子的な差異を全長シークエンスでみることにより、日本の流行株がどのように海外から流入してきたのかを検討することができる。 新型コロナウイルス流行後に RS ウイルス感染症が減少した要因を解析する。当課題で採取したRSウイルスのウイルス情報に加え、国の感染症発生動向調査、国土交通省や観光局から入手した海外渡航・国内移動の交通情報、個人・社会的衛生行動の変化、気象条件などを加味して、新型コロナウイルス流行による RS ウイルス感染症減少の要因を解明する研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度はRS ウィルスの次世代シークエンスを行わなかったため消耗品費が低額の支出で済んだこと、学会がオンライン開催であったため旅費がかからなかったこと、人件費として、解析アルバイトが1名のみで済んだことで謝金が少なくなったことから、翌年度に繰り越しが生じた。
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