本年度は、ガボン共和国において採取した野生動物検体のメタゲノム解析により検出したデングウイルスを含む蚊媒介性ウイルスについてゲノム配列を詳細に解析した。全長配列が得られたフラビウイルスの一つはBLAST解析により、ヒト病原性が十分に想定される新種のフラビウイルスであると判明している。系統解析により、このフラビウイルスは黄熱ウイルスグループに属しデングウイルス・西ナイル熱ウイルスなどからは遺伝学的に遠位に位置すること、また黄熱ウイルスグループにおいてもアフリカに古くから存在するヒト病原性ウイルスに遺伝学的に近いことが明らかになった。この新規フラビウイルスは小型哺乳類から検出されており、遺伝学的に近いウイルスも小型哺乳類が宿主と考えられていることから、中部アフリカでは小型哺乳類が主要な蚊媒介性ウイルス宿主の一つである可能性がある。さらには、検出したデングウイルスについて系統解析した結果、森林型と呼ばれる希少なウイルス種であることが判明した。これらの研究成果から、ガボンの野生動物が有する蚊媒介性ウイルスの人獣共通感染症としてのヒト感染リスクが存在することを明らかにした。特に、本研究で検出した新規のフラビウイルスはヒトに病原性があるウイルスに遺伝学的に近く、また森林型デングウイルスもヒト感染例が報告されていることから、今後これらのウイルスのヒト感染が発生しないか注意深く監視を続けていく必要があると考えられる。
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