研究課題/領域番号 |
21K10423
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
大澤 佳代 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (50324942)
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研究分担者 |
重村 克巳 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (00457102)
白川 利朗 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (70335446)
三浦 真希子 神戸常盤大学, 保健科学部, 助教 (00610320)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルバペネマーゼ / 基質拡張型βラクタマーゼ / 薬剤耐性細菌 / 薬剤耐性遺伝子 / プラスミド / 多国間比較 |
研究実績の概要 |
今年度は国内およびインドネシアで検出された株について下記のごとく解析した。国内のカルバペネム耐性大腸菌44株では、メロペネムに0%と感性率が低かった一方イミペネムには56.8%と高い感性率を示した。97.7%がカルバペネマーゼを産生、70.5%が基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を産生していた。この研究内容はAntibiotics (Basel).(2021)での論文発表や第69回日本化学療法学会西日本支部総会(2021年岐阜)で発表した。さらにインドネシアでは尿路感染症患者から分離された原因菌における交差耐性とセファロスポリン耐性のメカニズムを調べた。2015年から2016年にインドネシアの患者から分離された大腸菌や肺炎桿菌を含む50株は、第3世代セファロスポリン系、カルバペネム系、ホスホマイシン、キノロン系抗菌薬に対する耐性を示したため、ESBL遺伝子、カルバペネマーゼ関連遺伝子、ホスホマイシン耐性に関連するfosA3遺伝子およびキノロン耐性関連遺伝子の変異の存在を確認したところカルバペネマーゼ遺伝子を持つ菌株はなく、菌株の6.0%がfosA3遺伝子を持っており、また菌株の72-74%はキノロン耐性遺伝子に変異があり、変異の有無とfosA3遺伝子の検出にはそれぞれ有意な相関関係によりインドネシアにおける抗菌薬交差耐性菌が認められた。この内容はCurr Microbiol.(2021)にて論文発表を行った。また、インドネシアのESBL産生大腸菌において、ESBL関連遺伝子であるCTX-M遺伝子が染色体上とプラスミド上に存在し、それらは特異的な菌株に由来することについてInt J Urol.(2021)に論文掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、インドネシアおよび日本における薬剤耐性細菌における詳細な疫学解析を行い、論文は発表ならびに学会発表により報告を行っている。学会発表については、国内における基質拡張型β-ラクタマーゼ産生過粘稠性肺炎桿菌54株を対象として,ESBL確認試験および薬剤感受性試験を行い、また、ESBL遺伝子型や病原性遺伝子の検出を行った結果は第69回日本化学療法学会西日本支部総会(2021年岐阜)で発表し、論文投稿中である。また、GES-24型カルバペネマーゼ産生Pseudomonas putidaについての発表も第33回日本臨床微生物学会総会・学術集会(2021年仙台)にて発表している。インドネシア由来の薬剤耐性細菌については2018年にインドネシアの鶏肉から分離されたS. enterica 71株を対象とし、インドネシアにおける食肉から分離された薬剤耐性サルモネラの遺伝子解析を行い、多剤耐性株が存在することを確認し、第95回日本感染症学会総会・学術講演会(2021年 Web開催)および第15回日本臨床検査教育学会総会(2021年Web開催)にて発表し、論文投稿中である。また、インドネシアにおけるヒト及び環境由来のESBL産生大腸菌の分布調査を行い、第95回日本感染症学会総会・学術講演会(2021年 Web開催)にて発表している。このように、現在までの達成度として、概ね予定どおり進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、インドネシア、日本のカルバペネムを含む薬剤耐性細菌について、薬剤感受性試験と一部薬剤耐性遺伝子を確認するなど進行中である。また、さらにインドネシアやネパール、日本の環境中(病院近辺や川)からの薬剤耐性細菌の検出を行っており、すでに薬剤感受性試験を終了し、次世代ゲノムシークエンスを一部解析しており、今後学会発表や論文作成を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題について、共同研究者による薬剤耐性機構の解明に関する調査を実施し、研究室既存の機器や消耗品を使用したため予算を執行していないが、本課題の遂行に関しては以上の理由から特段支障はない。次年度使用計画としては、薬剤耐性遺伝子検出のためのシークエンスや試薬・消耗品の費用に使用する予定である。
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