研究課題
ラドンは希ガスの天然放射性元素で、土壌や建材などに含まれるラジウムを起源とする。ラドンはあらゆる場所に存在するため、環境動態や健康影響の理解、および公衆のリスク認知は重要である。本研究では、生活環境中に存在するラドンの動態解明に向けて、屋内外でラドン濃度や気象などの関連パラメータを連続測定し、ラドン濃度の変動をモデル解析する。また、様々な科学的知見と社会のあいだに存在する科学者のあり方についての考察を行うとともに、これに資するリスク評価をラドンをモデルケースとして行う。今年度は、昨年度までに実施したモデルルーム内と周辺屋外における各種測定データを解析した(空気中ラドン・子孫核種濃度、土壌・建材からのラドン散逸率、建材の表面温度・含水率、屋内エアロゾル濃度、屋内外の差圧、温度・湿度・気圧などの気象データ、など)。その結果、例えば、ラドン・トロン発生源のひとつである建物内壁について、壁の構造によって両者の散逸特性が異なることを実験的かつ数理的に実証した。また、ラドン・子孫核種とエアロゾルの挙動について、部屋の違いやエアクリーナーの使用による変化特性を明らかにした。また、我が国における屋内ラドンのリスクを計算したところ、高ラドン濃度域のリスク寄与割合は低いことがわかった。WHOなどの国際機関が勧告する参考レベルの導入の是非を考察した結果、仮に導入するにしても、その効果(肺がん死者数の低減)は限定的であるため、目的の明確化などが必要なことを結論した。
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Applied Radiation and Isotopes
巻: 207 ページ: 111180~111180
10.1016/j.apradiso.2024.111180