研究課題
メチル水銀の胎児期曝露におけるリスク評価・管理は、メチル水銀の健康影響に関する最も重要な課題の一つであるが、妊婦や胎児におけるメチル水銀の代謝・動態については明らかになっていない。また、肥満や糖代謝異常などの病態下における妊婦や胎児におけるメチル水銀のリスク評価・管理は行われていない。本研究は肥満に伴う糖代謝異常の病態下の母仔におけるメチル水銀の組織移行の解明を目的として、高脂肪食の給餌 (HFD) による雌の糖代謝異常 (Diet-Induced Obesity: DIO) モデルマウスの確立、及び一連の実験(C57BL/6Jマウスへの12週間の給餌、インスリン負荷試験 (ITT)、経口糖負荷試験 (OGTT)、HbA1cによる糖代謝異常の評価、交配、メチル水銀の投与、母体及び胎仔組織の採取、総水銀分析)を行い、普通食の給餌群 (Ctrl) と比較・解析した。メチル水銀の各組織への移行は、Kp値を用いて評価した(母体又は胎仔の各組織中の総水銀量/母体の血漿中の総水銀量)。その結果、本実験条件下(肥満に伴う軽度の糖代謝異常)において、母親のKp値は、脳においてCtrl群≧HFD群、腎臓においてCtrl群≒HFD群、肝臓においてCtrl群>HFD群、血球においてCtrl群≒HFD群であった。胎仔のKp値は、脳においてCtrl群≧HFD群、腎臓においてCtrl群>HFD群、肝臓においてCtrl群>HFD群、胎盤においてCtrl群≧HFD群であることが明らかになった。
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