本研究は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の要約統計量をもとに、疾患発症リスク予測システムの基盤を確立することを目的としている。 2023年度は、前年度から引き続き、他の研究機関との共同研究として、提供された検体のSNPアレイデータおよびimputation(遺伝子型推定)を実施した。 また、研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下の通りである。1)国内外の研究機関が主催する共同研究において、東北メディカル・メガバンク計画(TMM)のゲノムコホートデータを用いたGWASを実施した。Global Lipids Genetics Consortium(GLGC)との共同研究では、世界各国のコホート/バイオバンクから収集された、様々な祖先性集団のGWAS要約統計量を統合することで、LDL-Cなどの脂質レベルの予測精度や関連遺伝子のマッピング精度の向上につながることが示された。この他、腎機能関連形質や変形性膝関節症のコンソーシアムのメタGWASにも参加、貢献した。2)共同研究機関から提供された検体のSNPアレイデータおよびimputationを実施した。これらのデータは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が運営、管理するバイオバンクに蓄積され、疾患リスク予測のための基盤データとして二次利用される見通しである。3)大規模ゲノムコホートデータを活用した、高精度な疾患リスク予測手法の検証を実施した。この中で、Ueki & Tamiya (2016)が開発したsmooth-threshold multivariate genetic prediction(STMGP)を、TMMデータおよびUKバイオバンクデータに適用し、予測能が従来の手法を上回る傾向が示された。また、データ分割による計算の効率性や、外部のGWAS要約統計量の取込みによる予測能の向上についても検証した。
|