研究実績の概要 |
本研究では、日本人の地域住民を対象に半世紀以上にわたり蓄積された疫学調査の成績を用いて、時代の異なるコホートを設定し、高血圧の管理状況の時代的変化を明らかにする。さらに、その高血圧の管理状況別にみた累積リスクがその後の心血管病に及ぼす影響を時代毎に検討した。1974年、2002年の久山町健診受診者のうち心血管病既往のない40-79歳の男女(それぞれ1,972名、2,854名)を15年間追跡した成績を用いて、血圧管理レベル別にみた心血管病発症との関連の時代的推移を検討した。各集団の健診時の血圧管理レベルは、以下の6群に分類した:(1)正常血圧群(血圧120/80 mmHg未満)、(2)正常高値血圧群(血圧120-129/80 mmHg未満)、(3)高値血圧群(血圧130-139/80-89 mmHg)、(4)未治療群(降圧薬服用なし+血圧140/90 mmHg以上)、(5)管理不良群(降圧薬服用あり+血圧140/90 mmHg以上)、(6)管理良好群(降圧薬服用あり+血圧140/90 mmHg未満)。その結果、高値血圧者および高血圧未治療者・血圧管理不良者、血圧管理良好群の心血管病の罹患率(性年齢調整後)は、1974年コホート集団に比べ、2002年コホート集団では有意な低下を認めた。さらに、各血圧管理レベル別の心血管病発症のハザード比(多変量調整後)は1974年から2002年の集団にかけて低下し、いずれのコホート集団においても、高値血圧者および高血圧未治療者・血圧管理不良者では、正常血圧者に比べ心血管病の発症リスクは有意が高かった。一方、血圧管理良好群では、高血圧未治療者・血圧管理不良者に比べ、発症リスクは低かった。わが国における心血管病の予防対策を更に推進する上で、高値血圧以上の血圧上昇者に対する血圧管理の徹底が重要であることが示唆された。今後は、これらの成果を海外学術誌に報告予定である。
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