研究課題
2013~2019年度の奈良県国保データベース(奈良県KDB)かつ2013~2018年度の特定健診・後期高齢者健診データを利用して、健診データと連結したレセプトデータ:延べ228,556人の情報を取得することができた。そのうち、透析導入ハイリスク因子の同定に際して最も影響しうるデータと考えられる血清クレアチニン値を3回以上測定している患者115,191人(糖尿病患者:13,441人を含む)から各人のeGFR(推定糸球体濾過量)を計算し、初期3点のeGFRからeGFR年間変化量を評価し、eGFR年間変化量とレセプトデータで同定した透析導入との関連を解析している。また、レセプトデータおよび健診データから、各人の既往歴や併存合併症の評価を行い、これらの併存疾患が透析導入に及ぼす影響を解析している。eGFRの年間変化量はレセプトデータで同定される患者背景(年齢や合併症などの基礎疾患)によって異なり、糖尿病を含む生活習慣病の合併はeGFRの年間変化量を大きく低下させる。例えば対象者全体(平均年齢71.6歳、男性41%)において、eGFRの年間変化量は-0.37±3.67 mL/min/1.73m2/yであるのに対し、糖尿病患者(平均年齢73.3歳、男性56%)では-0.58±4.31 mL/min/1.73m2/y、尿蛋白を有する糖尿病患者では-1.12±4.66 mL/min/1.73m2/y、eGFR60未満の糖尿病患者では-2.29±4.28 mL/min/1.73m2/yであった。また、eGFR年間変化量-3.0 mL/min/1.73m2/yが透析導入と有意に関連していることが明らかになった。これらの知見を活用して、透析導入に影響しうる新規のハイリスク因子の同定を行う方針である。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた、奈良県KDB(レセプトデータベース)および健診データベースからの対象者抽出および解析実施のプラットフォームを作成することができ、解析を開始することができている。
特定健診や臨床現場でより有効な指標を評価するために、研究計画当初に予定していた網羅的なリスク因子の探索と併行して、より現実的な臨床指標の評価を検討している。現在は透析導入に最も影響しうる因子と考えられるeGFRの経時的変化に注目して解析を行っている。
学術集会がオンラインで開催されたため、旅費として請求していた費用が不要になったため残金が生じた。次年度の交通費および研究報告・研究遂行に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
BMJ Open
巻: 11 ページ: e048436~e048436
10.1136/bmjopen-2020-048436
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