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2023 年度 実施状況報告書

口腔保健はフレイル予防の勘所となりえるか?-縦断疫学研究に基づく検討-

研究課題

研究課題/領域番号 21K10452
研究機関東北医科薬科大学

研究代表者

村上 任尚  東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (70451606)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードフレイル / 歯科口腔保健 / コホート研究
研究実績の概要

本研究は、疫学研究の手法を用いて、歯の喪失や歯周病を含む口腔の健康とその後のフレイルとの関連を明らかにし、口腔保健指標から将来のフレイル発生を予測できるかを探り、その関連メカニズムの一端を解明することを目的としている。研究対象は、岩手県花巻市大迫町で毎年実施されている「健康づくりフロンティア事業(旧: 家庭血圧測定事業)」に参加した地域一般住民のうち、「岩手県花巻市大迫町における家庭血圧に基づく疫学研究」(通称: 大迫研究)への参加同意が得られた者達からなる集団である。
令和5年度は、対象となる大迫町内川目地区から男女合わせて計148名の事業参加があった。そのうちの希望者100名を対象に、オプション検査(頭部MRI撮影および各種検診を含む結果説明会)を年度内に4回(10/19、11/2、12/18、1/10)設定し、93名(男性41名、女性52名、平均年齢70.7歳)の参加があった。参加者に対して医科検診、血液検査、ならびに口腔機能検査を含む歯科検診を行い、口腔保健状態を包括的に評価する歯科関連データ、フレイルの評価指標、交絡要因と考えられるデータを収集した。得られたデータは、適切な管理の下で既存データとともに整理・保管されている。本年度は、頭部MRIのデータを用いて、認知・精神的脆弱性(フレイル)に関連する可能性のある脳(左海馬)の萎縮と、歯数および歯周病との関連、およびそれらの交互作用について論文にまとめ、発表を行った。
また、花巻市および関係する他の研究機関とのオンラインミーティングを定期的(月に一回程度)に開催するとともに、各種学会にて情報収集・交換を行い、最終年度における感染対策も含めた研究推進方略について検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

大迫研究では、大迫町を4つの地区(大迫、内川目、外川目、亀ヶ森)に分け、1年ごとに異なる地域の検診を行っている。令和5年度は内川目地区の住民を対象に前述の事業が行われ、男女合わせて計148名が家庭血圧を測定した。そのうちの希望者を対象とする結果説明会(医科・歯科検診)を、大迫研究の主たる研究機関である帝京大学、申請者が所属する東北医科薬科大学を含め、東北大学、秋田大学、大阪大学、慶応大学、総合花巻病院および岩手県花巻市大迫総合支所保健福祉課の協力により、年度内に4回(10/19、11/2、12/18、1/10)設定し、無事に全日程開催することができた。いずれかの日程で検診を受診した計93名(男性41名、女性52名、平均年齢70.7歳)に対し、歯科医師による口腔内診査および聞き取り調査を含む各種口腔機能検査(①口腔細菌数、②口腔湿潤度、③咬合力、④舌圧、⑤咀嚼能力)、医師および保健師が中心となって行う医科学検査(身体検査、各種血圧測定、採血検査、運動能力検査、認知機能検査、生活習慣・既往歴などの聴取)を実施し、口腔保健状態を包括的に評価する歯科関連データ、フレイルの評価指標、交絡要因と考えられる各種データを収集した。得られたデータは、参加者本人への検診結果のフィードバックに用いるとともに、適切な管理の下で既存データとともに整理・保管されている。
また、本年度は、頭部MRIのデータを用いて、認知・精神的脆弱性(フレイル)に関連する可能性のある脳(左海馬)の萎縮と歯数および歯周病との関連、およびそれらの交互作用について論文にまとめ、発表した。一方で、取り扱い業者の選定に難航し新規導入を予定していた項目(歯肉溝浸出液バイオマーカー検査)を採用することができなかった点や、身体的フレイルと直接関連する歯科保健指標に関しての成果報告が不十分である点など、いくつか課題が残った。

今後の研究の推進方策

調査先自治体、および研究基盤である大迫研究の主たる研究機関である帝京大学を含め他の研究機関との連携を強め、感染対策に十分留意しながら大迫研究の継続調査を行う。令和5年度の内川目地区に続き、令和6年度は外川目地区にて住民検診を実施予定であり、過去の実績をもとに約180名の事業参加を見込んでいる。引き続き例年通りの採血検査、歯科検診等を実施するとともに、導入を見送らざるを得なかった新規項目の導入を目指しつつ、歯科検診データ、血液データ、運動能力データ、認知機能検査データ、およびその他交絡要因となりうる臨床データを収集する。
また、最終年度は、本課題期間内に新たに得られたデータと既存データを用いた関連する解析についてもさらに順次進め、学会発表および論文化を図る予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、ほぼ例年通りの内容で事業が実施されたものの、口腔内診査など直接的な対象者への対応を担当していた研究者の海外留学にともない、新しいスタッフの参入や担当部署の変更があったため、慣れない新規検査項目の導入が残念ながら見送られた。それに伴って必要物品購入に予定していた支出が減少したこと、本研究が多施設共同で実施されている大迫研究の一部であるために消耗品の購入が他経費から賄われたことにより次年度使用額が生じた。
次年度には、検診に必要となる消耗品の購入費、検診実施および成果報告にともなう旅費や英文校正、論文投稿ならびに新規導入項目への支出に当該研究費を使用する予定である。また、口腔内診査時に必要なフロアスタンド型のポータブル無影灯が老朽化し破損していることが確認されたため、購入を検討したい。さらに、研究を進めていく中で、研究・解析用PCの他に、歯科検診データの原本および解析用の元データを管理・調整・保管するためのセキュリティを考慮したストレージないしPCの必要性が判明したため、併せて購入を検討する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Associations of Dental Health With the Progression of Hippocampal Atrophy in Community-Dwelling Individuals: The Ohasama Study2023

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi, S., T. Murakami, M. Satoh, T. Komiyama, T. Ohi, Y. Miyoshi, K. Endo, T. Hiratsuka, A. Hara, Y. Tatsumi, T. Totsune, K. Asayama, M. Kikuya, K. Nomura, A. Hozawa, H. Metoki, Y. Imai, M. Watanabe, T. Ohkubo and Y. Hattori
    • 雑誌名

      Neurology

      巻: 101 ページ: e1056-e1068

    • DOI

      10.1212/WNL.0000000000207579

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 現在歯数と歯周炎の交互作用が海馬形態と認知機能に与える影響 大迫研究における縦断MRI解析2023

    • 著者名/発表者名
      山口哲史,小宮山貴将,大井 孝,村上任尚,大久保孝義,服部佳功
    • 学会等名
      日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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公開日: 2024-12-25  

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