研究実績の概要 |
【目的】2021年に日本政府が高齢者に優先して新型コロナウイルスワクチンの接種目標を掲げたことに伴い、原則2回接種とするワクチンを1回目接種にして、64歳以下の成人にまで広げることが有効かが議論された。 【方法】研究①では、ワクチン接種後の相対的な感受性低下を考慮し、年齢群別接触行列を用いて、各年齢群における累積感染率および累積死亡者数を算出した。一方で研究②では、政府が掲げた一日100万本を高齢者及び成人に対して1回接種した戦略Aと、高齢者のみに対して2回接種完了し、後に成人に2回接種する戦略Bに対し、最終的な感染者数から、総死亡者数を計算した。 【結果】(研究①)日本国内全人口がワクチン未接種の場合、最終的に89.1%が感染を経験するが、高齢者2回接種では78.2%、高齢者1回接種にして残り半分在庫を成人1回接種に回した場合は、1回接種者の感受性が50%とするなら、78.3%と推定された。高齢者2回接種率30%、成人1回接種率100%を想定すれば54.6%にまで下がり、実効再生産数は2.50から1.12に低下すると推定された。(研究②)行動制限(public health and social measures: PHSM)の期間によって、戦略Aでは最終的に1,387,078~4,682,995人が感染すると予測され、総死亡者数は39,405~1,387,078人と見積もられた。一方で、戦略Bでは1,900,172~69,856,699人が感染し、総死亡者数は17,423~695,295人と見積もられた。 【考察】1回接種で接種範囲を拡大しても、2回接種のように効率よく死亡を防ぐことはできないが、PHSMなど社会的介入を組み合わせることで両者をより効率的に減少させることができることが示せた。
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