研究課題
多腺性自己免疫症候群(Autoimmune Polyendocrine Syndrome:APS)は、内分泌器官だけでなく、様々な臓器に横断的な障害を引き起こす疾患であり、専門的治療が必要とされています。しかし、その実態は依然として明らかではありません。本研究は、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、日本人のAPSの実態を把握することを目的としています。令和4年度に入ってから、研究の進捗として、匿名レセプトの情報収集のため厚生労働省のNDBからのデータ抽出方法に従って抽出項目を検討し、各種マスターの整備を行いました。また、解析環境の構築に向けて、計算機サーバーやデータ解析ソフトウェアを調達し、周辺機器のセットアップや解析準備を進めてきました。しかし、前年度の新型コロナウイルス感染症の流行が影響を与え、申請手続きの遅れが生じています。現在はNDBサンプリングデータの申請手続きを終えて、承認を待っています。一方で、小規模サンプルによる解析として、2007年から2022年までの16年間で本学附属病院に通院した1型または2型糖尿病患者6476名を対象に調査を行いました。その結果、1型糖尿病218名(バセドウ病26名、橋本病46名)、2型糖尿病825名(バセドウ病100名、橋本病63名)の合併が確認され、APSの頻度に関して新たな知見を得ております。今後は、文献調査やエクセルによるシミュレーションを進め、NDBサンプリングデータを入手後、データ整理や解析用データセットの作成を行います。さらに、機械学習や深層学習を用いた探索的データ解析を活用し、臨床データに基づいたAPS患者を見逃さない予測モデルの構築に取り組みます。
3: やや遅れている
令和4年度には、当初の計画に沿って、本研究の実施に不可欠な解析環境の整備に取り組みました。これには、計算機などの必要な備品の調達やデータベースの構築が含まれています。さらに、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)へのデータ提供申請を行い、具体的な研究プロトコルの策定にも着手しました。しかしながら、昨年度から続く新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、十分な解析環境の準備に必要な時間を確保することが困難となり、研究の進捗に遅れが生じています。今後は、状況を鑑みつつ、研究環境の整備と進捗を迅速に進めるよう努めます。
本研究では、NDBデータの取得において、手戻りなどの問題が発生しないように、厚生労働省の担当部局および窓口と緊密に連携を図りつつ、申請手続きを適切に実施し、既に提出済みです。データが入手でき次第、迅速に研究計画の実行およびデータ解析に取り組んでいきます。さらに、分担研究者から技術的および研究方法論的な課題に関する助言を適宜受け入れながら、学会発表や学術論文などを通じて、研究成果の発信を積極的に行っていく予定です。これにより、本研究の知見が広く共有され、自己免疫疾患に対する理解や診断・治療の質の向上に貢献できることが期待されます。
昨年度から続く新型コロナウイルス感染症の影響により、令和4年度も十分な解析時間の確保や検討が困難な状況が続いていました。機密性の高いNDBデータを取り扱うためには、セキュリティ要件を満たす研究施設への出入りが必要ですが、研究環境整備に必要な物品の購入に遅れが生じ、調査・研究旅費の執行も延期されています。令和5年度には、NDBサンプリングデータの入手費用や調査・研究旅費の使用を予定しており、今後は研究環境の整備や解析作業を迅速に進めるよう努めます。
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CAMPUS HEALTH
巻: 59 ページ: 261-263
巻: 59 ページ: 248-250
巻: 59 ページ: 172-174
巻: 59 ページ: 116-118
糖尿病
巻: 65 ページ: 169