研究課題/領域番号 |
21K10474
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
紙谷 史夏 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70865576)
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研究分担者 |
西岡 祐一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50812351)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 下肢切断 / 2型糖尿病 / SGLT2阻害薬 |
研究実績の概要 |
まず、『糖尿病患者の下肢切断リスク解析』を大規模医療データベースNDB(national database)を用いて実施した。これは本邦における下肢切断の全国統計の最初の報告で、下肢大切断と下肢小切断の発生率は、糖尿病のない人と比較して糖尿病のある人でそれぞれ10倍と15倍高いことを明らかにした。観察期間中に、年間の小切断率は一定のままであったが大切断率の有意な低下が観察され、この結果をBMJ openに発表した。 その後、研究課題である『SGLT2阻害薬使用後の下肢切断発生率』の比較検討に取り組んだ。この解析は、詳細評価が必要でありNDB(詳細データは開示不可)を使用できず、商用レセプトデータベースDeSC(344万人、2021年9月時点)を用いて解析した。SGLT2阻害薬処方の有無で年齢、性別、併存疾患、併用薬が大きく異なり、糖尿病薬選択や下肢切断に関わる背景をできる限り調整した多変量解析を実施した。SGLT2I投与群全体では大切断は少なく、SGLT2I種類による差はなかった。SGLT2I投与群全体では小切断が少なく、種類別ではダバグリフロジンとカナグリフロジン投与群では小切断が少なく、他のSGLT2Iは差がなかった。観察期間は既報と比較して本研究では1036±746日と長く、より実態を捉えている可能性がある。本研究で下肢小切断カナグリフロジンで少なかったのは、警告を受けて医師が下肢切断のハイリスク患者に投与を避けた可能性がある、本研究からSGLT2Iによって下肢切断リスクが増加しない可能性が示唆され、本成果を2022年の糖尿病学会年次集会で報告した。 その後、上記研究中に習得したビッグデータ解析の手法を用いて、抗甲状腺薬による無顆粒球症についての解析、免疫チェックポイント阻害薬による内分泌疾患の解析にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SGLT2阻害薬による下肢切断解析前に実施した、糖尿病患者の下肢切断リスク解析については順調に進み、結果をBMJ openに発表することができた。 その後、SGLT2阻害薬による下肢切断リスクの解析に取り組む中で、SGLT2阻害薬の保険適応病名が追加になり、2型糖尿病がなくても心不全や慢性腎臓病患者にも処方されるようになった。このことで、レセプトデータで用いる疾患定義が複雑化し、2022年以降のデータ使用時が既報の疾患定義で解析困難になった。そこで、2022年まで用いていたデータを用いてデータを糖尿病学会で報告を実施した。今回の研究ではSGLT2阻害薬の適応拡大前までのデータで実施する方針とした。 さらに、SGLT2Iによる下肢切断研究に着手する中で得たビッグデータ解析手法を用いて、新たな研究課題も見つけ、その解析にも着手している。 以上のことから解析、発表ともに概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
既に糖尿病患者の下肢切断研究についてはBMJ openにacceptされているが、SGLT2阻害薬による下肢切断研究についても糖尿病学会年次集会で報告した内容について論文化を進める方針である。 さらに、現在取り組む始めた新たな研究課題についても、学会発表、論文発表できるように進め行く方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響下で学会は前年に引き続きオンライン実施が多く、学会参加にひつような旅費、宿泊費などがかからなかったことで差額が生じた。翌年度分として研究報告・研究追行に充てる予定である。
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