研究課題
岩手県花巻市大迫町で実施される大迫コホート研究のデータ収集を、花巻市が実施する健康づくりフロンティア事業を基盤として実施した。本年度では205名の家庭血圧測定、および137名の脳MRI撮影等の検査が行われ、そのうち研究参加同意者に限った解析データセットの作成が進行している。他方で、これまでデータ整備ができている978名を対象に家庭高血圧発症予測モデルを構築し、今後の社会活動制限による血圧変化予測モデルを構築するための基礎データが得られた。その他、血圧変化や臓器障害評価に考慮すべき要因として、歯科指標や食塩摂取量などを明らかにしている。社会活動制限前後の血圧変化を大規模データで検討するため、民間企業が保有する健診データを収集し、血圧情報を保有かつ降圧薬服用有無の情報に変化が無かった対象者157,510名を抽出した。健診実施月を調整した分割時系列解析(線形混合モデル)によって、2015~2018年のトレンドから推定される2020年度の血圧値と実測値との差を計算し、それを社会活動制限前後の血圧変化度として算出した。結果、2020年度には、収縮期血圧(95%信頼区間)が未治療女性では+2.11 (1.97~2.24) mmHg、未治療男性では+1.60 (1.51~1.70) mmHg、降圧治療中女性では+1.92 (1.60~2.23) mmHg、および降圧治療中男性では+1.00 (0.79~1.21) mmHg過剰に変動していた。この2020年度の血圧変化は、body mass index、HbA1c、肝機能、喫煙、飲酒、および運動習慣を時間依存性共変量として調整後も残存していた。腎機能や尿酸など、血圧や生活習慣病に関連する要因の分布と相互関連の検討も進め、今後の解析で必要な要因も明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
既存データを利用することで、研究課題に関わる一定の研究成果を上げた。今後の解析に必要なデータ収集も進めているが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、調査の一部が中止または難航していることも勘案し、「おおむね順調」と評価した。
大迫コホート研究のデータ収集を継続し、脳心血管疾患や認知症のリスク要因である家庭血圧と日々の血圧変動(血圧日間変動)の変化を明らかにする。民間企業が保有する健診・レセプトデータの解析も併せて進め、血圧以外の体重、脂質、血糖などの生活習慣病指標が社会活動制限前後にどう変化するかを線形混合モデルで明らかにする。その解析の中で、性・年齢別(若年/壮年・中年期/高齢期)、疾患別(高血圧/糖尿病/脂質異常症/腎臓病)、服薬状況別、および雇用状況別(被用者/扶養家族/自営業者)といった層別解析も実施する。脳心血管疾患や腎機能をアウトカムとした検討もする。解析モデルとして、従来の解析方法に捉われず、決定木モデルや回帰モデルのような単純なモデルからニューラルネットワークに至る機械学習モデルを利用し、社会活動制限によって健康状態が悪化する対象者の特定やその予測モデルの構築を多角的に試みる。学生データとして、東北医科薬科大学をはじめとした大学大学生の社会活動制限前後の状況も調査する予定である。
新型コロナウイルス感染症対策によって大迫コホート研究の調査先である岩手県に県外スタッフが調査に携わることが困難であった。次年度には全面的にデータ収集が再開する見込みであり、その際に当該研究費を使用する。
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巻: - ページ: -
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