研究課題
岩手県花巻市大迫町で実施される大迫コホート研究のデータ収集を、花巻市が実施する健康づくりフロンティア事業を基盤として実施した。本年度では142名の家庭血圧測定、および63名の脳MRI撮影等の検査が行われ、そのうち研究参加同意者に限った解析データセットの作成が進行している。他方で、血圧レベルの経時的変化への影響として、血圧の長期再現性を検証した。4年間隔の血圧レベルの変化をとらえたところ、血圧レベルの平均値は上昇していたものの、その偶然誤差は健診時血圧で大きく、家庭血圧の再現性はより良好であることが明らかとなった(級内相関係数で≧0.7)。健診時血圧と家庭血圧の差である白衣効果は、その長期の再現性が不良であり、経年変化を捉える指標として不適切であることが示唆された。また、非高血圧レベルであっても非医療環境下で測定される血圧が将来の持続性高血圧につながる可能性も明らかにした。一方、民間企業が保有する健診データを活用した検討については、社会活動制限後に収縮期/拡張期血圧が1~2/0.5~1 mmHg上昇していた結果に関する論文報告を行った。また、降圧治療者において、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の新規処方により見かけ上の推定糸球体ろ過量低下量を定量化し、今後の腎機能推移に関する検討に必要な知見を明らかにした。また、腎機能低下には収縮期血圧と拡張期血圧が独立して関連することも明らかにし、社会活動制限前後の生活習慣病の推移を検討するにあたって必要な知見が得られた。
2: おおむね順調に進展している
大迫コホート研究の調査も再開でき、一定のデータ収集ができた。その結果、分析対象者を増やせる見込みである。研究課題に関わる論文報告もでき、一定の成果も挙げられている。
大迫コホート研究のデータ収集を継続し、対象者を追加したうえで、社会活動制限前後のデータを保有する対象者における、血圧、体重、脂質、または血糖を含む生活習慣病指標の2020年前後の変化を確認する。民間企業が保有する健診・レセプトデータの解析も併せて進め、生活習慣病指標の社会活動制限前後の変化を分析する。大迫コホート研究の結果と民間企業データとの結果を比較し、共通の結果を明らかにする。それぞれのポピュレーションにおける結果の方向性が同様の場合、結果を統合することも検討する。社会活動制限によって悪化した生活習慣病の機序を共分散構造分析で明らかにする。機械学習の利用可能性についても検討し、機序の理解可能かつ統計学的に妥当な統計モデルも検討する。最終的には、社会活動制限を対象者特性にって事前に予測可能なモデルを作成する。
新型コロナウイルス感染症対策によって大迫コホート研究に関わる調査が困難であった時の研究費が継続して残っているためである。次年度に大迫コホート研究の詳細調査や成果報告を成果報告に向けて作業を加速させる。その際の調査費用や成果報告関連費用(英文校正や論文掲載費等)に使用される見込みである。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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