研究課題
篠山研究の2017年度調査協力者において、生活習慣要因特に食事要因と腎機能の予後との関連を調べるために、今年度の特定健康診査結果および郵送と対面のアンケートによる服薬状況および動脈硬化性疾患の発症情報を収集し追跡調査を実施した。さらに2017年度に血管年齢検査を受検した調査協力者において、凍結保存検体による大豆イソフラボン代謝物の測定を行った。スピアマン相関係数による評価では、男女とも1週間当たりの黒大豆煮豆の摂取量とゲニステイン濃度が強く相関した。また女性においてゲニステイン濃度は腹囲および中性脂肪と負の相関がみとめられ、ゲニステイン濃度最低3分位において推定糸球体濾過能低値(eGFR<60 mL/分/1.73m2)の者の割合が有意に高かった。篠山研究では、LDL-コレステロール高値について、女性では身体活動量と負の関連がみとめられたこと、男性では身体活動量の1年の中での相対評価(少ない、ふつう、多い)との負の関連がみとめられたことなどから、男性は女性と比べ、身体活動量の低下がより強く冬季のLDL-コレステロール値の上昇に関連する可能性があることを報告した。神戸研究では、対面の各種生理検査を含む追跡調査を再開した。神戸研究では、男性において生体インピーダンス法により測定した内臓脂肪面積と、腎機能の評価指標であるeGFRが独立した負の関連をみとめたが、女性ではBMIの調整により有意な関連がみとめられなくなったこと、腎機能とも関連するとされる塩味味覚閾値の高値(塩味を感じにくい)は男女とも喫煙習慣が関連し、男性では1日あたりの推定食塩摂取量の多さとも関連したことなどを報告した。
4: 遅れている
感染症拡大防止の観点から、健診会場における予約人数の制限や研究目的の生理検査を控える状況が続いたため、特定健診結果以外の生理検査の結果が得られない状況となった。集団健診に来ない研究対象者への郵送アンケートを並行して実施したが、各対象者の同意を得て国保データベースシステムを介し特定健診結果を得る必要があることや、健診システム更新などを受けてデータ作成に時間を要する状況となった。
篠山研究においては、ベースライン調査から5年以上経過した者を対象とし、追跡調査の項目として心臓足首血管指数(CAVI)および上下肢動脈収縮期血圧比(ABI)の測定を再開する。ベースライン調査のアンケートで聴取した食事や身体活動と特定健診結果により評価可能な腎機能指標の変化との関連についての解析を進める。さらに、この対象者の半数が大豆イソフラボン代謝物を測定した者であるため、腎機能指標および動脈硬化指標との関連についての解析を継続する。神戸研究においては、腎機能と関連がみとめられた内臓脂肪面積の測定などを追跡調査として実施する。腎機能に関連する尿細管障害指標を測定済みであり、糸球体障害指標と合わせて評価可能なため、解析を進める。
健診会場にて生理検査ができなかったため、次年度に使用することとなった。追跡調査として動脈硬化指標(CAVIおよびABI)の測定を再開するため、検査スタッフの人件費や検査に必要な消耗品等に充てる。
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日本公衆衛生雑誌
巻: - ページ: -
10.11236/jph.22-062
Endocr J.
巻: 70 ページ: 97-106
10.1507/endocrj.EJ22-0218